新しい摂食障害 正食症と補完代替医療

 
「一つ一つの精神疾患の病名や概念はどう変わってきたか
摂食障害領域の疾患名とその実体」
西園マーハ文
『精神科治療学』35巻9号973ー976 2020年
 
 
1873年に「ラセーグ徴候」のシャルル・ラセーグ先生が「Anorexie hysterique(ヒステリー性無食欲)」を名付けました。aは「~でない」という接頭語で、「norexia」は「追い求める」という意味であり、「食欲がない」という意味です。
 
 
1874年にイギリスの名医ウィリアム・ガルが、精神病では無いという意味を込めて「神経性無食欲症」と名付けました。ヴィクトリア女王の主治医だったウィリアム・ガルは、ジョニー・デップ主演の映画『フロム・ヘル』で切り裂きジャックの正体とされています。
 

 
 
1997年にスティーブン・ブラットマン先生が「からだに良いものしか食べない」「食品添加物や間違った食物を拒否する」タイプの食生活を行い、栄養不良になる人々を「正食症」と名付けました。
 
スティーブン・ブラットマン先生は、実は1970年代から補完代替医療の実践者・愛好者でした。しかし、20年間もインドのアーユルヴェーダ医学や日本のマクロビオティック、中国の辟穀理論、ヴェーガニズム(菜食主義)を実践しているうちに疑問がわいてきました。そして健康的な食べ物を病的に追及する人々を「ヘルス・フード・ジャンキー」として分析して正食症の概念を提唱した後は、補完代替医療の文献を出版しています。
 
 
2007年スティーブン・ブラットマン
「補完代替医療:それが本当に効果があるのかについての科学的評価」
Complementary and Alternative Health: The Scientific Verdict on What Really Works
Steven Bratman M.D. M.P.H. Collins (2007/6/4)
 
 
しかし、正食症の概念は、「精神病ではなく、価値観や文化の問題ではないのか」と補完代替医療関係者は疑問に思うと思います。
 
同時に思い出したのは、映画『不食の時代』の鍼灸師、森美智代先生のことです。西式健康法の甲田光雄先生のもとで断食療法の指導を受けて、一日の栄養を青汁1杯にされています。
 
スティーブン・ブラットマン先生の文章を読んで人格的にリスペクトしていますが、正食症の概念は、かなり議論が必要だと感じました。
 
 

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