若年者ワクチン問題

 
 
2021年8月24日 科学雑誌『ネーチャー』
「COVIDワクチンと血栓:研究者たちがこれまでのところ知っていること」
 
科学者たちはCOVIDワクチンを受けた後で、ごく少数に起こる謎の血栓がなぜなのかを理解しようとしている
Scientists are trying to understand why a small number of people develop a mysterious clotting disorder after receiving a COVID jab.
 
 
 
以下、引用。
 
フィリップ・ニコルソンが何かがおかしいと知ったのは、異常な血栓を持った2人目の人がやってきたときだった。
 
血栓は若い人にはまれであり、血栓と驚くほど低レベルの血小板の組み合わせを見るのはさらにまれである。
 
しかし、3月の1週間の間に、このような症状のペアを持つ2人の若者がニコルソンが血液学の専門家として働いている英国バーミンガムのクイーンエリザベス病院に到着した。そして最近、両者ともオックスフォード-アストラゼネカCOVID-19ワクチンを接種されていた。
 
その週、ニコルソンは研究者が現在ワクチン誘発免疫血栓性血小板減少症(VITT)と呼んでいるものを最初に目撃した。これはオックスフォード-アストラゼネカ、またはジョンソン&ジョンソンを受けたごく少数の人々に影響を与える生命を脅かすミステリアスな状態である。現在、ワクチン誘発免疫血栓性血小板減少症はオックスフォード-アストラゼネカワクチンを接種した50歳未満の50,000人に約1人で発生したと推定されている。
 
 
 
アストラゼネカ・ワクチンを受けた50歳未満の5万人に1人発生したと推定されています。
 
8月10日ころに、イギリス・オックスフォード大学でアストラゼネカ・ワクチンを開発したアンドリュー・ポラード教授が「デルタ変異株の登場によって、ワクチンによる集団免疫獲得は不可能となった」と発言したことは世界中で大きなニュースとして報道されました。
 
そこで気になったのは、ポラード教授が「もう、イギリスの若年者にワクチンを焦って打つ必要はない。発展途上国のハイリスク患者が守られていないのに、イギリスの若者を優先するのは倫理的ではない」と発言していたことでした。
 
 
8月24日の『ネーチャー』記事をみて、理由がわかりました。ポラード教授が開発したアストラゼネカ・ワクチンで、5万人に1人とはいえ、ワクチン誘発免疫血栓性血小板減少症(VITT)が起こるわけですから、これはワクチン開発者としては忸怩たる思いだと推察できます。
 
 
ファイザー・ワクチンは、若年者に心筋炎と心膜炎などの重篤な副反応を、副反応全体の9.3パーセントで起こします。根拠は、アメリカ政府CDCが2021年7月30日に発表した論文です。
 
 
2021年7月30日
「COVID-19 12〜17歳の青年におけるワクチンの安全性—米国、2020年12月14日〜2021年7月16日」
COVID-19 Vaccine Safety in Adolescents Aged 12–17 Years — United States, December 14, 2020–July 16, 2021
Anne M. Hause, PhD
On July 30, 2021 Weekly / August 6, 2021 / 70(31);1053-1058
 
2020年12月14日~21年7月16日にファイザー製ワクチンを接種した12~17歳に発現した副反応は9,246件で、90.7%が非重篤、9.3%が心筋炎(4.3%)を含む重篤なものだった。
 
 
2021年8月11日には『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン(NEJМ)』にモデルナ・ワクチンの若年者向け治験の論文が掲載されました。
 
 
2021年8月11日
『ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』
「青年期のメッセンジャーRNAモデルナ・ワクチンの評価」
Evaluation of mRNA-1273 SARS-CoV-2 Vaccine in Adolescents
Kashif Ali, M.D et al.August 11, 2021
 
参加者の平均年齢は14.3歳(74%は12〜15歳)
全身性の副作用が1回目の注射後の参加者の68.5%、2回目の注射後の86.1%で報告された。
最も一般的な全身反応は、倦怠感、頭痛、筋肉痛、悪寒。
頭痛は、プラセボ群のそれぞれ38.5%と30.2%と比較して、最初の注射後の44.6%と2回目の注射後の70.2%で報告された。
倦怠感は、プラセボ群のそれぞれ36.6%と28.9%と比較して、最初の注射後の47.9%と2回目の注射後の67.8%で報告された。
2回目の注射後、データが入手可能な2477人の参加者のうち46人にグレード3の発熱が発生した。要請された局所的、または全身的反応は、一般に平均約4日間持続した。死亡は発生しなかった。
 
 
 
このあたりから「新型コロナウイルスのデルタ変異株では、子どもの重篤例やロング・コビットが激増している」という報道が増えます。
 
若年者のロング・コビット後遺症の論文は2つあります。
 
 
2021年4月9日
「子どものロング・コビット後遺症の初歩的なエビデンス」
Preliminary evidence on long COVID in children
Danilo Buonsenso, et al.
Acta Paediatr. 2021 Jul;110(7):2208-221
First published: 09 April 2021
 
不眠症(18.6%)、呼吸器症状(痛みと胸部圧迫感を含む)(14.7%)、鼻づまり(12.4%)、倦怠感(10.8%)、筋肉(10.1%)と関節痛(6.9%)、集中力の低下( 10.1%)が最も頻繁に報告された症状だった。これらの症状は症候性および無症候性の急性COVID-19の小児の両方で説明されており、最初の診断から60日を超えて評価された小児で特に頻繁に見られた。
 
 
 
2021年6月23日『ネーチャー』
「自宅隔離患者の前向きコホートにおけるロング・コビット後遺症」
Long COVID in a prospective cohort of home-isolated patients
Bjørn Blomberg
Nature Medicine (2021)Published: 23 June 2021
 
16〜30歳の家庭で隔離された若年成人の52%(32/61)が、6か月で味覚や嗅覚の喪失(28%、17/61)、倦怠感(21%)などの症状を示したことがわかった。
 
 
 
若年者の28%で味覚や嗅覚の喪失、倦怠感が10~21%というのは、ロング・コビット後遺症のリスクをモデルナ・ワクチンの副反応と比較すると、この時点では、若年者はワクチン接種のほうが相対的に望ましいという判断をしていました。
 
 
しかし、2021年8月20日に『ワシントンポスト』がFDAとCDCが若年者向けモデルナ・ワクチンを認可していないのは、ファイザー・ワクチンよりも心筋炎を起こすリスクが高い可能性のためだと報道しました。
 
 
2021年8月20日『ワシントンポスト』
「若年者のモデルナワクチンは、普通でない副反応と関連がある可能性がある」
U.S. review of possible link between Moderna vaccine and uncommon side effect delays adolescent approval
 
思春期の若者向けのモデルナのコロナウイルスワクチンは連邦保健当局によってまだ承認されていない。これは、ショットが以前に信じられていたよりも若い成人の心臓病のリスクが高いことに関連している可能性があるという新たな報告を調査しているためである。
 
FDAとCDCが関与する調査はカナダのデータに焦点を当てており、モデルナワクチンは、特に以下の男性の場合、ファイザーワクチンよりも若者の心筋炎のリスクが高い可能性があることを示唆している。
 
 
現在、FDAとCDCが調査中であり、公式のコメントは出ていません。『ワシントンポスト』の独自取材のようです。
 
これは判断が難しい問題であり、自分自身が情報を整理するために並べてみました。この1カ月で次々と論文・報道が発表されたので、情報収集・分析はたいへんです。
 
 

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