石器時代と呪術的思考

 
アイスマン、エッツイは、まさに「野生の知識人」でした。
 
銅のオノをつくり、弓矢をつくり、服や靴も革でつくり、病気の治療法も知っていました。
石器時代の人間の脳は、サバイバルのために、そのポテンシャルを全開にしていました。
 
 
しかし、一方で、石器時代の壁画や仮面、彫像などを見ていると、ある感慨にとらわれます。
呪術的思考と強い死の恐怖と迷信です。
 
脳や人間行動の研究をすると、人間はクロマニョン人の頃から進化していないことを痛感します。アタマの中は石器時代のままなのです。
 
私たちは「呪術的思考」と「死の恐怖」にとらわれています。
古代エジプトは完全に「死」と「呪術」にとらわれた文明でした。
古代中国の殷は「死」と「生贄」「占い」の文明です。
 
私たちの脳は「ヤツらと我々」という分類をしてしまう部族的思考や男女差別思考、暴力とマウンティングが深く刻まれているのです。
 
 
サピエンス全史』の著者、ヘブライ大学のユヴァ・ノア・ハラリ教授の言う通り、現生人類は虚構を信じることで、他の人類よりも優位に立ちました。
 

 
 
インターネットやSNSは、2013年にISIS、のちのISを産みました。
ISがSNSやYouTube、インターネットを駆使して西側諸国の若者たちをリクルートして過激化させるのに対抗したイギリス軍では、ISと情報戦を戦うことでノウハウを蓄積した、情報操作のための民間軍事企業、ケンブリッジ・アナリティカが生まれます。
 
 
Facebookのビッグデータを活用したケンブリッジ・アナリティカは、西側先進国で「女性嫌い」と「外国人嫌い」の「部族」を発見し、マイクロターゲッティング技術でイギリスのEU離脱やトランプ大統領誕生を後押ししました。
 
アラブの春の頃は、「インターネットは民主主義を産む」という夢が語られましたが、インターネット技術の進展とともに、情報操作による「新しい中世」も作り出されています。
 
民間でも、閉鎖的なオンラインサロンが流行しています。
インターネットからスプリンターネット(分割ネット)への移行です。
 
分割されたネット空間では、その人が好む記事ばかりがAIによって画面上に現れ、それらに繰り返しさらされるうちにわずかであった偏りが増幅され、極端な意見に知覚が変えられてしまいます。
 
いわゆる「エコーチェンバー現象」ですが、これはもともとは広告のために作られた「売るためのアルゴリズム」でした。
 
カリスマは「絶対的真実」を商品として売り、信者は「心の安定」という商品を買います。
同じ仕組みが今、実生活で不安を感じている人たちを狙い撃ちにし、社会を分断しています。
 
「敵/味方に分ける部族的思考」「(死を恐れ、迷信を信じる)魔術的思考」「権威やリーダーを無条件に信じる心的傾向」「虚構を信じる心的特性」「真実/虚偽あるいは善/悪という単純化された二元論思考」というはるか昔からの思考様式は、現代においてもまだ大きな楔となっています。
 
 

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