中国宮廷医学の秘密

 
 
陳可冀著『中国宮廷医学』(中国青年出版社2003年)
 
 
2003年に中国の北京の王府井書店で見つけた瞬間に即買いしました。
 
この文献の一番、良いところは、中国歴代皇帝の寿命と死因が表になっていることです。
 
むかしは「我が家は中国の皇帝の侍医を歴代務め、われこそは伝承者」という人がたくさんいました。
 
始皇帝につかえた韓非子は、人を評価する方法として「まず言動を記録し、それを地下の甕の中に埋め、一年後に取り出して、一年前の言動と現在の行動が一致しているかをつきあわせる」ことを提案しています。
 
中国宮廷医学を韓非子の方法で見てみると、驚くことがわかります。
 
まず、中国の歴代皇帝は、歴史記録から非常に短命です。30代で亡くなる皇帝が多すぎます。酒の飲みすぎなど不摂生も多いですが、金丹という鉱物薬による中毒は、明らかに侍医の責任です。
 
さらに、毒殺と思われる不審死が多過ぎます。当時、トリカブト(附子)や鉱物薬など、毒物に詳しい職業で、宮廷に居る人とは誰なのでしょうか・・・。
 
 
 
関連して、イタリアの政治史も「毒」の歴史です。
 
ベネチア共和国には、秘密の十人委員会が毒殺をおこなっていたという政府の公式記録が残されています。
チェーザレ・ボルジアや妹のルクレッティア・ボルジアが用いた「ボルジア家の秘密の毒(カンタレラ)」は政敵を暗殺する手段でした。
2018年の論文では、ボルジア家の毒、カンタレラの成分としてトリカブトが疑われています。
 
 
2018年『毒物研究と応用』
「ボルジア時代の毒物学:カンタレラ毒のミステリー」
Toxicology in the Borgias period: The mystery of Cantarella poison
Marianna Karamanou et al.
Toxicology Research and Application
First Published May 1, 2018
 
 
 
 

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