末梢性顔面神経麻痺の治療のタイミング問題

 
 
2021年12月15日
「末梢性顔面神経麻痺の鍼治療のタイミング:システマティックレビューとメタアナリシス」
Timing of Acupuncture Treatment in Peripheral Facial Paralysis: A Systematic Review and Meta-Analysis
Zelin Yu et al.Comput Math Methods Med. 2021 Dec 15;2021:4221955.
 
 
以下、引用。
【結果】
2847人の参加者を登録した15件のランダム化比較試験が選択基準を満たした。急性顔面神経麻痺における鍼治療とプレドニゾン療法を比較した場合、有効率に有意差はなかった。
 
急性期の鍼治療は、非急性期と比較して、有効率(RR、1.03; 95%CI、1.00-1.07)と治癒率(RR、1.34; 95%CI、1.14-1.58)の両方を増加させた。
 
 
解釈は分かれると思いますが、役に立つ情報だと思います。
 
 
末梢性顔面神経麻痺には、スコットランドの医師、チャールズ・ベルが記述した「ベル麻痺」や、アメリカの神経学者、ジェームズ・ラムゼー・ハントが記述した「ラムゼーハント症候群」が代表的です。
 
急性期は3日以内、または発症1週間以内のゴールデンタイムに、プレドニゾンなどのステロイドを投与すると治癒率を17%向上させることが『標準的神経治療:Bell麻痺』などのガイドラインで推奨されています。
 
 
2012年「エビデンス・ベースド・ガイドライン・アップデート:ベル麻痺へのステロイドと抗ウイルス剤:アメリカ神経学会小委員会によるガイドラインの進歩」
Evidence-based guideline update: steroids and antivirals for Bell palsy: report of the Guideline Development Subcommittee of the American Academy of Neurology
Gary S Gronseth et al.Neurology. 2012 Nov 27;79(22):2209-13.
 
 
これを読んで驚いたのは、ベル麻痺に対して抗ウイルス剤、アシクロビルは7パーセント程度しか急性期にステロイドと一緒に入れても改善せずに、効果は不明とされていたことです。7パーセントでも改善するなら、一緒に入れるべきだとはされていました。
 
 
末梢性顔面神経麻痺の鍼灸適応・不適応の問題は、かなり研究してもグレーゾーンが大きいと感じます。
 
EBМを調べると、2007年のアメリカ神経学会が顔面神経の減圧手術を推奨していないことや、コクランレビューで早期手術の効果が不明瞭とされていることなどがアップデートできました。
 
現在は鍼灸適応・不適応問題を「青信号」「黄信号」「赤信号」で例えると、急性期は西洋医学優先が当然で「赤信号」です。
 
 
※2019年1月10日『神経再生研究』
「顔面神経挫傷後の電気鍼による末梢神経再生とグリア細胞由来神経栄養因子発現のアップレギュレイト上方向性調節」
Electroacupuncture promotes peripheral nerve regeneration after facial nerve crush injury and upregulates the expression of glial cell-derived neurotrophic factor
Jing Fei et al.
Neural Regeneration Research Year : 2019 | Volume : 14 | Issue : 4 | Page : 673-682
 
 

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