鍼刺し後の痛みの緩和

 
 
2021年11月25日スペイン・アルカラ大学
「鍼刺し後の痛みへの運動の効果:ランダム化比較試験」
Efficacy of Exercise on Postneedling Soreness: A Randomized Controlled Trial
Nicola Sante Diciolla et al.
J Clin Med. 2021 Dec; 10(23): 5527.
Published online 2021 Nov 25.
 
 
スペインの鍼刺し後の痛み(PNS:Post‐Needling Soreness)の研究です。
 
注意点は、西洋医学の理学療法士によるトリガーポイント・ドライニードリングで使われる鍼は0.30㎜と7番鍼です。
 
アメリカの理学療法士が使っている鍼は太く長く、筋肉をビクンと単収縮させるローカル・トウィッチ・レスポンスを起こすための雀啄をするドグマが存在するため、内出血や術後疼痛などの有害事象も日本鍼灸よりはるかに多いです。ローカル・トウィッチ・レスポンスは、いわゆる得気です。
 
 
鍼刺し後の痛みを和らげるのに使われているのはコールド・スプレイ後のストレッチと
阻血性圧迫(=指圧)です。
 
以下、引用。
 
この鍼刺し後の苦痛・痛みを防ぐためにはいくつかの戦略があり、経皮的電気神経刺激は慢性頸部痛の患者の僧帽筋の活性化された筋筋膜トリガーポイント(МTrPs)へのドライニードリング鍼のあとの鍼刺し後の痛みの強度を減らした。あるいは、コールド・スプレイ後のストレッチは、短期間、鍼刺し後の痛みを減らし、阻血性圧迫(指圧)は上部僧帽筋の潜在性筋筋膜トリガーポイントへのドライニードリング鍼後の痛みの強度と期間を減らした。
 
 
筋筋膜性疼痛症候群(МPS)とトリガーポイントの概念をつくったジャネット・トラベルは、コールド・スプレイ後のストレッチを愛用していました。
 
阻血性圧迫もジャネット・トラベルとデビット・サイモンズが1983年に発表したテクニックです。
 
 
1983年「マイオフェーシャル・ペインと機能障害:トリガーポイントマニュアル」
Myofascial Pain and Dysfunction, Vol. 1: The Trigger Point Manual, The Upper Extremities Hardcover – June 1, 1983
Janet Travell , David Simons
Williams & Wilkins (June 1, 1983)
 
 
1979年にチェコの医師、カレル・レウィットがドライ・ニードリングを提唱しました。
 
これは薬液を入れた注射針を使ったトラベルの方法をウェット・ニードリングとして、薬液を入れない注射針や鍼灸の鍼を治療に使い、ドライ・ニードリングと呼びました。
 
1984年にカレル・レウィットはデビッド・サイモンズとポスト・アイソメトリック・リラクゼーション・エクササイズを提唱します。オステオパシー医師、フレッド・ミッチェルが1948年に開発したマッスル・エナジー・テクニックの変法です。
 
 
1984年「筋筋膜痛:ポスト・アイソメトリック・リラクゼーションによる開放」
Myofascial pain: relief by post-isometric relaxation.
Lewit K, Simons DG.
Arch Phys Med Rehabil. 1984 Aug;65(8):452-6
 
 
これはストレッチによってトリガーポイント、筋筋膜性疼痛を緩和させるものです。
 
わたしはあん摩マッサージ指圧師でもあり、鍼した後に指圧・ストレッチ・運動法を組み合わせることで鍼の後の遺感覚を緩和してきました。
 
以下、引用。
すべてのタイプのトレーニングが鍼刺し後の痛みと圧痛閾値を介入後6時間から12時間で改善させた。最終的には短縮性運動は、介入後の鍼刺し後の痛みに即座に影響するかもしれないし、伸張性運動は圧痛閾値をベースラインに戻すかもしれない。 
 
 
筋骨格系の痛みに対して、わたしは鍼と指圧・ストレッチ・運動法を組み合わせることが多く、臨床での参考になる知識だと思いました。
 
 

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