【BOOK】『中国「コロナ封じ」の虚実-デジタル監視は14億人を統制できるか』

 
高口 康太
‎中央公論新社 (2021/12/9)
 

 
 
『幸福な監視国家・中国』の著者、高口康太先生が、健康帝国へと突き進む中国をジャーナリスティックにレポートします。
 
白眉は、133ページからの「第3章 デマと迷信を乗り越えて」で、「デマ大国」である中国の実情と世論監視システムの描写です。
 
150ページからは「中国世論統治の歴史」、170ページからは「中国医学に有用性はあるか」です。
 

 
 
著者のスタンスは「体調が悪い時には伝統薬やカッピングに頼り、実際に効果を実感することが多い」けれど、命に関わる病気なら西洋医学を選択するというものです。これは常識的でバランスが取れていると思います。
 
 
1番、傑作なのは、2016年に中国共産党がリリースした「チベット仏教活仏検索システム」の紹介です。中国共産党はチベット仏教のパンチェン・ラマの転生仏の少年を準備したり、輪廻転生を肯定していて、ダライラマ14世はそれが嫌で「もう転生しない」と公式声明を出しています。
 
 
法輪功など気功弾圧の指揮をとっていた中国共産党の周永康書記が、2016年に習近平との権力闘争に敗北して逮捕されたら、周永康書記は新疆ウイグル自治区の「特異効能(気功による超能力)」を持つとされる風水師、曹永正にハマっていたというエピソードも笑いました。
 
周永康は中国共産党幹部で「グーグルを中国から撤退させた男」です。風水師、曹永正は国家機密漏洩罪で逮捕されていますし、日本語でこの事件の顛末を書いた本も出でいます。
 
 
角川書店2016年
 

 
 
気功を弾圧していた中国共産党幹部が気功師や風水師にハマっていたのです。
 
デジタル技術による健康帝国を目指している超大国がバランスの取れた筆致で描写されており、とても面白かったです。
 
 
 

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