神経障害としての腕橈骨そうよう症

2022年4月21日
「鍼とカイロプラクティックで治療された腕橈骨そうよう症(BRP)の一症例」
A Case of Brachioradial Pruritus Treated with Chiropractic and Acupuncture
Kathryn J. Golden et al.
Case Rep Dermatol. 2022 Jan-Apr; 14(1): 93–97.
Published online 2022 Apr 21.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9149350/

以下、引用。

この症例は57歳の退役軍人の男性で腕橈骨そうよう症(BRP)として鍼とカイロプラクティックで治療された。この患者は、両側C5・C6デルマトームの上肢の鋭い痛みと灼熱感、かゆみによって腕橈骨そうよう症と診断された。

腕橈骨そうよう症は、C5・C6デルマトームにそった局所性神経障害です。
ほとんどは両側性で、C5-C8のMRIでの頚椎の椎間孔の狭窄や変形性頚椎症などの所見があり、痛みやシビレ以上にかゆみが出ます。患部にアイスパックを当てるとかゆみが軽減し、アイスパックを外すとかゆみが再び増悪するというアイスパック徴候が特徴です。処方薬としてガバペンチンや抗うつ剤などが使われていますが、治療は確立されていません。

以下、引用。

(薬物療法に効果はなく、初期治療のカイロプラクティックで効果はあったもののカイロプラクティックの)改善はプラトー停滞期に達した。鍼が治療に加えられて、曲池(LI11)と上肢前腕のC5・C6デルマトームの阿是穴が加えられた。カイロプラクティックと組み合わせた8週間で5回の治療の結果として、患者は不快感が大幅に減少したと報告した。1年ぶりに彼は一晩中眠ることができて、アイスパックを必要としなかった。

腕橈骨そうよう症のような局所性神経障害の治療法は確立されていませんが、鍼灸の臨床で出会う可能性はあると思います。

日本語の「しびれ」は、ジセステジア(不快感を伴う異常感覚)、パレステジア(不快感を伴わない異常感覚)、ハイポエスティージア(感覚鈍麻)に相当します。

鍼の感覚に、酸、脹、重、鈍、麻があります。
酸は痛み、またはヒリヒリ感(中国語では「だるい感じ」)、脹は充満感・膨張感・圧力感、重は重い感じ、鈍は鈍い感じ、麻はしびれた感じ、またはチクチク感になると考えます。

日本語の「しびれ」や「しびれ感」は、難しい問題を内包していると思います。
正座して足がしびれた場合の「しびれ」、糖尿病性神経障害による「しびれ」、抗がん剤の副作用による「手足のしびれ」はいずれも機序が異なり、おそらく患者さんが感じる主観的経験も異なりますが言語表現は同じ「しびれ」になります。

英語のburnlngは「灼熱感」です。
この57歳男性の症例は「sharp pain, burning, and itching」なので「鋭い痛み、灼熱感、かゆみ」になります。
「痛み」「しびれ」「かゆみ」は、結構、言語としての側面があるように感じます。

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