Cоvidー19とレニン・アンジオテンシン系と鍼

2022年7月4日
フランス国立科学研究センターの医師 ジャン・マルク・サバティエ(生化学と微生物学博士)
「鍼はCоvidー19を治療できるか」
L’acupuncture peut-elle traiter des maladies Covid-19 ?

以下、引用。

動物実験で示されているように、中国伝統医学である鍼はCоvidー19の病変の治療に役立つ可能性がある。

ウイルス感染中、SARS-CoV-2ウイルスは標的細胞のACE2受容体に結合することによりレニン-アンジオテンシン系の機能障害を誘発する。ウイルスによって誘発されるレニン・アンジオテンシン系の機能不全は、多くの臓器および組織に存在するその有害な受容体AT1Rの過剰活性化をもたらす。

コロナウイルスの表面のスパイク・タンパクは、ACE2と結合して細胞に侵入します。

ACE2が発現しているのは、肺・小腸・心臓・血管です。

ACE2は細胞膜に存在する膜タンパクであり、血管収縮剤ACEと拮抗して血管壁を弛緩する働きがあります。

ACEアンジオテンシン転換酵素は血管収縮剤であり、アンジオテンシン1をアンジオテンシン2に転換させる働きを阻害するACE阻害薬は降圧剤の代表です。ACEとACE2は血管の収縮と弛緩でバランスをとっています。
アンジオテンシンII受容体1型の過剰活性化が起こります。

以下、引用。

非常に驚くべきことに、動物実験は鍼の効果を証明している。

ジャン・マルク・ステファン
Jean-Marc Stéphan
「血管性高血圧:鍼の実験」
Hypertension artérielle : acupuncture expérimentale

鍼とレニン・アンジオテンシン系について考察した画期的な論文だと思います。
コビット19とレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系の間には密接な関係があります。

2022年2月1日『英国薬理学会雑誌(PRP)』
「コビット19とレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系の相互関係の生理学:治療のための鍵」
The interacting physiology of COVID-19 and the renin-angiotensin-aldosterone system: Key agents for treatment
Eugenie R. Lumbers
Pharmacology Research & Perspectives Volume10, Issue1
First published: 01 February 2022

原始的なホモサピエンスは、約30万年前に狩猟採集民として最初に出現した。彼らは、感染への曝露は最小限であるが、トラウマへの曝露は最大である小グループに住んでいた。外傷には怪我、組織や細胞の損傷、失血が含まれる。外傷から回復するには、損傷/感染に対する組織反応の活性化と組織灌流を維持するための全身反応の活性化の両方が必要である。組織および循環におけるレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系は両方の役割を果たす。

その受容体であるアンジオテンシンII受容体1型と相互作用するアンギオテンシン2は、この緊急応答システムを調整する主要な経路である。アンギオテンシン2受容体1型経路は生存に不可欠だが、過剰発現すると組織とシステムの両方に損傷を与える可能性がある。21世紀のホモサピエンスも、過活動のアンギオテンシン=AT1Rパスウェイによってダメージを受けていることが明確に示されている。

コロナウイルスが人体に侵入すると、コロナウイルスはACE2に結合して侵入し、アンギオテンシン2の産生を刺激します。

さらにAT1R受容体を刺激して炎症を悪化させ、肥満者、高血圧患者、糖尿病患者を劇的に悪化させます。AT1R受容体の過剰刺激は血管内皮細胞の炎症を悪化させます。

そして、鍼はNOの産生を通じて血管内皮細胞に働きかけ、レニン・アンギオテンシン系に働きかける証拠があります。

カリフォルニア大学のステファニー・チェン先生とジョン・C・ロングハースト教授の鍼による高血圧研究です。

2007年12月「ネコの電気鍼による心臓循環器系における交感神経反射の阻害における延髄GABA、オピオイド、ノイセプチンの役割」
Role of medullary GABA, opioids, and nociceptin in prolonged inhibition of cardiovascular sympathoexcitatory reflexes during electroacupuncture in cats
Stephanie C Tjen-A-Looi 1, Peng Li, John C Longhurst
Am J Physiol Heart Circ Physiol . Volume 293Issue 6 December 2007 Pages H3627-H3635
Epub 2007 Sep 21.

2015年「高血圧患者への電気鍼の長期持続的な血圧降下:ランダム化比較試験」
Long-Lasting Reduction of Blood Pressure by Electroacupuncture in Patients with Hypertension: Randomized Controlled Trial. Peng Li .John C. Longhurst .et al. Medical Acupuncture Vol. 27: Issue. 4: Pages. 253-266

カリフォルニア大学医学部のジョン・C・ロングハースト教授は20年間、鍼と高血圧の関係を研究し続けて、2018年に飛行機事故で亡くなられました。
鍼と血管の弛緩と収縮の関係は、より研究する必要性を感じます。

日本でも、レニンと鍼の関係の論文が2022年2月に発表されています。

2022年「腎兪(BL23)の鍼刺激はレニンの血漿変化に関連した交感神経活動に影響する」
Specific acupuncture stimulation of Shenshu (BL23) affects sympathetic nervous activity-associated plasma renin concentration changes
Kanae Umemoto
J Tradit Chin Med. 2022 Apr;42(2):250-255.

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