ファッシャの神経支配

2022年5月18日 イタリア
パドヴァ大学解剖学教授 カーラ・ステッコ著
「ファッシャの神経支配:文献のシステマティックレビュー」
Fascial Innervation: A Systematic Review of the Literature
Vidina Suarez-Rodriguez, and Carla Stecco 
Int J Mol Sci. 2022 May; 23(10): 5674.
Published online 2022 May 18


イタリア・パトヴァ大学はガリレオ・ガリレイやダンテが教授を務めた大学であり、解剖学教室は観光地になっています。

パトヴァ大学・解剖学教授カーラ・ステッコ先生は世界的なファッシャ研究者であり、お父さんの理学療法士ルイジ・ステッコ先生は『筋膜マニピュレーション』の著者です。


ルイジ・ステッコ著
『筋膜マニピュレーション 理論編筋骨格系疼痛治療』
医歯薬出版

カーラ・ステッコ著
『筋膜系の機能解剖アトラス』
医歯薬出版 

以下、引用。

ソマティックセラピーの開発者、モーシェ・フェルデンクライスとアイダ・ロルフは感覚器としてのファッシャの重要性について知らなかったかのように見える。オステオパシーのクリエイター創始者であるアンドリュー・テイラー・スティルは「疑いなくファッシャには神経が存在している。すべてのファッシャ組織は脳の分岐として扱い、同じように治療されるべきである」と述べる。

モーシェ・フェルデンクライスはロシアに生まれたイスラエル人の物理学者で、1933年にフランスのパリで嘉納治五郎と出会い、柔道を始め、パリに最初の柔道連盟をつくりました。

1942年に30代でサッカーで痛めた膝を自分自身で治すために始めた身体観察でアウェアネス・スルー・ムーブメント(身体運動を通じた気づき)と言われるフェルデンクライス・メソッドを創始しました。

アイダ・ロルフは1896年にニューヨークに生まれ、1920年コロンビア大学で生化学で博士号をとりました。

この1920年代にロルフはハタ・ヨガを研究していたそうです。1920年代の欧米は東洋ブーム・自然医学ブームでした。当時はドイツでもヨガやホメオパシーが大流行しています。

1927年にロルフはスイスのジュネーブ、スイス工科大学で数学と物理学を学びながらホメオパシーを学びました。

1930年代には、ロルフはアメリカでオステオパシー、カイロプラクティック、アレクサンダーテクニークを研究しています。この時代にオステオパスのトマス・モリソン博士からオステオパシーを学び、モリソン博士は後にロルフィングのクラスで筋膜について講義します。

1940年代にアイダ・ロルフは出張治療の形で初期のストラクチュラル・インテグレーション(構造の統合)というロルフィング技術を始めました。

1947年に夫のウォルターが亡くなり、14歳と13歳の息子をかかえ、貯金も少なかったロルフは多くのクライアントに施術を行いました。

1971年にロルフ身体統合研究所が設立され、アイダ・ロルフの活動はコロラド州ボールダーにうつります。

アイダ・ロルフはマッサージの出張治療から始まったのですが、1961-1970年のエサレン研究所時代をくぐりぬけて10セッションからなるボディワークや身体教育と呼ばれるものに変化していました。1977年に初の著書、『Rolfing:The Integration of Human Structure』が出版され、2年後の1979年に82歳で亡くなりました。

アイダ・ロルフは筋膜をリリースするボディワークを行っていました。

2007年にはアイダ・ロルフ・筋膜研究財団が設立されました。現在でも『アナトミー・トレイン』を書いたトマス・マイヤーズや『人体の張力ネットワーク 膜・筋膜―最新知見と治療アプローチ』を書いたロバート・シュレップなど、ロルフィングのプラクティショナーがファッシャ研究をリードしています。

『アナトミー・トレイン』 トマス・マイヤーズ

『人体の張力ネットワーク 膜・筋膜―最新知見と治療アプローチ』
ロバート・シュレップ

以下、引用。

(ファッシャに分布しているのは自由神経終末であり)それらの自由神経終末は、血管周囲だった。

他の著者たちは、外傷や使いすぎ、外科手術はファッシャの癒着を生成し、ヒアルロン酸濃度、粘弾性を増し、ファッシャに終わる神経レセプターを活性化することを描写している。この活性化が過剰なら、適応能力を超えて過活性と疼痛を引き起こすかもしれない。

ファッシャと関連するのは自由神経終末であり、カルシトニン遺伝子関連ペプチドやサブスタンスPのようです。

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