認知バイアスから抜け出せない日本

2022年7月26日 英新聞『デイリーメール』
「大気汚染は認知症を引き起こす 英政府アドバイザーは初めて何十年も言われてきたことを公認した」
Air pollution ‘IS causing dementia’: UK Government advisers acknowledge decades-old link for first time

英政府の大気汚染の医学影響委員会の発表内容が次々と報道されています。

2022年7月26日『テレグラフ』
「政府の研究では、大気汚染が認知症と関連している
Air pollution linked to rise in dementia in major Government study

2022年7月27日『インディペンデント』
「大気汚染は認知症を含む病気を引き起こす可能性が高い」
Air pollution ‘likely’ to contribute to diseases including dementia

2022年7月27日『ガーディアン』
「大気汚染は認知症のリスクを上げる可能性があるとイギリス政府の専門家は発見した」
Air pollution is ‘likely’ to raise dementia risk, find UK government experts

日本で言うなら『読売新聞』『朝日新聞』『毎日新聞』『産経新聞』から、タブロイド紙の『日刊ゲンダイ』や『夕刊フジ』まで報道している状態です。

一方、日本ではこのような深刻な環境と健康・医療に関わるニュースは、せいぜい小さなベタ記事が載る程度です。

優秀な日本の記者達は同じ情報を受け取りながら、全く違う世界を見ているのです。私も含め、洞窟のイドラに閉じ込められています。

人間には認知バイアスが存在し、認知の枠組外のことになると思考停止に陥ることが多いです。

世界的に認知バイアスを認識し、その思考の枠組みの外に出ることの重要性が認知革命として語られましたが、日本ではインパクトを残しませんでした。

ハワード・ガードナー著
『認知革命ー知の科学の誕生と展開』

一つの原因として、日本では科学ジャーナリズムと医療ジャーナリズムが高度に発展しなかったことが挙げられると思います。

1931年に寺田寅彦が創刊した岩波書店の『科学』は例外的存在ですが、「同時代を記録し、批評する」というジャーナリズムの「批評」の部分が弱過ぎたのだと思います。特に新聞メディアの「発表ジャーナリズム」が大きな影響を与えました。

1990年代以降、世界的な知のパラダイム・シフトについていけなかったことと情報の収集と分析能力が劇的に低下したことが、以降の失われた30年の大きな原因だと思います。

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