【BOOK】『フランサフリック』フランスによるアフリカ支配の終焉

 
2023年3月3日フランス国営「AFP通信」
「仏大統領 アフリカに干渉する時代は過去に」
 
以下、引用。
 
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は2日、アフリカ歴訪の最初の訪問国、ガボンで、フランスがアフリカに干渉する時代は「ずっと前に終わった」と述べた。アフリカでは、ロシアや中国の影響力が拡大する中、フランスの旧植民地の一部で反仏感情が高揚している。
 
マクロン氏はガボンの首都リーブルビルのフランス人コミュニティーでの演説で「フランサフリックの時代はずっと前に終わった」と言明。フランスの利益を守るために独裁的な指導者を支援した植民地支配以降のフランスの政治手法は過去のものだとの認識を示した。
 
 
フランスによるアフリカ支配「フランサフリック」という言葉をマクロン大統領が使ったことは、2023年3月のフランス語圏で大量の新聞記事となりました。
 
日本では、20年前の2003年に『フランサフリックーアフリカを食いものにするフランス』というフランソワ=クザヴィエ・ヴェルシャブによる文献が翻訳されました。

 
 
『フランサフリック』の著者は、長年、アフリカの子どもたちを飢餓と貧困から救うための政治運動をおこなってきたNGOの代表です。
フランス語圏のアフリカでおこなわれてきたフランサフリックの歴史を暴いています。
 
1960年代のカメルーン独立から話は始まります。
 
トーゴのエヤデマ大統領はフランス外人部隊の出身で、民主的に選ばれた前大統領を殺害し、38年間大統領をつとめて息子に権力を譲りました。
 
コートジボワールのフェリックス・ウフェ=ボワニ大統領の蓄財は、もちろんフランスによるものです。
 
ガボンのボンゴ大統領の蓄財もフランスによるマネーロンダリングでした。
 
ブルキナファソの英雄、アフリカのチェ・ゲバラといわれたサンカラを暗殺したコンパオレ大統領を支援したのもフランスでした。
 
そして『フランサフリックーアフリカを食いものにするフランス』は、1994年、ルワンダにおけるツチ族虐殺の背後におけるフランス政府の関与を告発していきます。
 
実際にフランスの責任といえるルワンダ虐殺は、コンゴ民主共和国を中心にした1996年-1997年の第1次コンゴ紛争を引き起こします。さらに1998年―2002年には第2次コンゴ紛争が起こります。これはアフリカ大戦と呼ばれ、アフリカ9か国30の武装勢力が入り乱れて戦う資源戦争となり、500万人から600万人が亡くなりました。
 
2002年から2007年はコートジボワール内戦が起こり、フランス軍が介入します。
 
アフリカの半分はフランス語圏であり、通貨もフランス中央銀行が発行するCFAフランです。
 
1991年の冷戦終結以降、ルワンダ虐殺以降の地獄のようなアフリカの現状の責任の半分はフランスにあります。
 
おしゃれなフランス映画、ジャン・リュック・ゴダールからのヌーヴェル・ヴァーグは、蓮見重彦をつうじて1980年代のバブル期日本に影響を与え、蓮見重彦は1997年に東京大学の総長となります。
1990年代は、アフリカのフランス語圏でルワンダ内戦からアフリカ大戦に至りますが、日本の「フランスファン」からは、アフリカに関する言説はほぼありませんでした。
 
哲学者の国、フランスはサルトルやカミュの実存主義、レヴィストロースの構造主義、ミシェル・フーコーやルイ・アルチュセールのポスト構造主義を産みました。
 
1983年に京都大学の浅田彰は『構造と力』でジャック・デリダの脱構築やジル・ドゥルーズのリゾームの概念を紹介し、ベストセラーとなりました。
 
フランス実存主義のアルベール・カミュはアフリカのアルジェリア出身で、ポスト構造主義のジャック・デリダもアルジェリアのピエ・ノワールといわれるフランス支配階層の出身です。
 
高田賢三や三宅一生、川久保玲はフランス・ファッション界で大成功を収めましたが、フランスによるアフリカ支配は顧みられませんでした。
 
1789年フランス革命とナポレオンによる教育の近代化から「近代」は始まりました。
第2次世界大戦のシャルル・ド・ゴールはレジスタンスとともにナチス・ドイツからフランスを解放しましたが、フランスの自由の戦士はインドシナ戦争でベトナムの独立を抑圧します。
 
アルジェリア戦争でアルジェリアの独立を抑圧したドゴールは、ベトナムでアメリカの支援を求め、ここからアメリカは泥沼のベトナム戦争に陥ります。
 
アジアやアフリカの植民地から収奪した資源がフランス経済の基礎となり、フランスのファッション・映画・哲学を産み出していました。
 
フランスがアフリカに押し付けた「近代化」から「近代」の本質があらわになっています。
 
2022年1月にウクライナ戦争がはじまり、2022年にロシアと中国はフランス語圏アフリカで影響力を拡大し、次々とフランス軍を追い出します。
ロシアの軍事会社、ワグネルはアフリカに治安を提供し、見返りに政府と軍事顧問契約を結び、金鉱山の利権を獲得します。
中国は病院を建て、鍼灸を提供し、医療を提供し、インフラに投資します。
 
2023年3月3日、フランスのマクロン大統領はフランサフリックの時代の終焉を宣言し、それがフランス国営AFP通信によって報道されました。これは近代からポスト近代への転換点と言えます。
この歴史の転換は、アフリカにおける中国鍼灸を分析することではじめて理解できました。これこそ、2023年の「政治と軍事の道具としての鍼灸」の現在地だと思います。
 

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