認知戦と認知バイアス

2021年5月20日『NATOレビュー』
ジョンホプキンス大学とロイヤル・カレッジ・オブ・ロンドン
「認知戦に対抗する:気づきとレジリエンス」
Countering cognitive warfare: awareness and resilience

以下、引用。

認知戦においては人のこころが戦場となる。その目的は人々の考え方を変えるだけでなく、いかにして人々が考えて行動するのかを変えることである。

1999年に中国人民解放軍が「超限戦」の概念を提唱しました。

2014年にロシアがクリミア半島をほぼ無血で占領した際に「ハイブリッド戦」の概念が確立しました。

2017年4月にフィンランドのヘルシンキにロシアのハイブリッド脅威に対抗するために、NATOによるカウンター・ハイブリッド脅威ヨーロッパセンターが創設されました。

ロシアはハイブリッド戦と呼び、中国は超限戦と呼んでいますが、NATOの「認知戦」という呼び方が適切だと思います。

2022年、ロシアのウクライナ侵攻が起こりました。一般庶民は情報操作によるウェポナイゼーションで武器化され、人間兵器としてSNS上で世論操作に利用され、分断によって社会が弱められました。

NATO論文はいま、起こっていることをマインド・コントロールと呼んでいます。

以下、引用。

ソーシャル・メディアは、ノーベル賞を受賞した行動科学者ダニエル・カーネマンのいう生まれつきのデシジョン・エラーである我々の認知バイアスを強化する。

(スマートフォンやタブレットの)ニュース・フィードとサーチエンジン、われわれの好みと関連した結果として確証バイアスを増大させる。

きちんとしたディフェンスのためには認知戦が進行中であるという意識が最低限、必要である。

2021年のNATO論文の分析は、正確な歴史認識だと思います。

まず、認知戦が進行中であるという認識が重要です。さらに、認知戦では認知バイアス、確証バイアスなどの人間に生得的なバイアスが利用されているという認識が重要です。NATO論文はその歴史認識を示しています。

自由民主主義という価値:
西側はこれらの道具をつかってソビエト連邦を打ち負かした。それは『歴史の終わり(フランシス・フクヤマ)』のようにみえた。しかし、そうでなかったのかもしれない。
(※NATO Review.Building a resilient innovation pipeline for the Alliance)

2002年ノーベル賞受賞者のダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーが1970年代に認知バイアスを研究しました。

1960年代にイギリスの認知科学者ピーター・ワッソンが確証バイアスを研究しました。認知科学革命により、1950年代から1970年代に人間の生まれつきの認知の歪みの知識が蓄積されました。

1970年代にニクソン訪中があり、アメリカでも日本でもパンダ・ハガー(親中派)の時代となりました。特に日本は田中角栄の田中派→竹下派の時代です。ニクソン訪中後に世界的な鍼麻酔ブームが起こり、中国伝統医学が世界に拡がります。

1991年の冷戦終結、1995年のWindows95発売以降のインターネット革命で世界は変わります。

現在は、米中貿易戦争とロシアの侵略により、完全に「新冷戦」です。

トランプ政権を成立させたSNS情報操作の背後にもロシアの影響があり、コロナ禍以降、認知戦は激化しています。認知バイアスの研究の必要性を感じます。

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