【BOOK】『コンスピリチュアリティ入門: スピリチュアルな人は陰謀論を信じやすいか』

 
『コンスピリチュアリティ入門: スピリチュアルな人は陰謀論を信じやすいか』
横山茂雄ほか  創元社 2023年3月27日
 

 
この本はとにかく面白かったです。
最も面白かったのは、東京大学教授の堀江宗正先生による社会調査の分析です。
 
私は、この本を読む前は「スピリチュアルな人は陰謀論を信じやすいのではないか」と思っていました。そして、それを証明するデータを求めてこの本を購入しました。
 
堀江宗正先生の社会調査によれば、事例研究ケーススタディでは、確かに「スピリチュアルで陰謀論コンスピラシー・セオリーを信じる人たちがSNSでは目立つ」けれども、実際に社会調査をしてみると、それは「SBNR(スピリチュアルだが宗教的ではない人々)」の少数派マイノリティであり、「スピリチュアルな人々が陰謀論を信じている」というのは間違いなのです。
 
つまり、文献のサブタイトル「スピリチュアルな人は陰謀論を信じやすいか」という問いに対して、答えは「スピリチュアルな人は陰謀論を信じにくい」という事前予測とは反対の結果がサイエンスによる答えでした。
 
さらにデータを分析していくと、「スピリチュアルだが宗教的ではない人々」は、むしろ陰謀論に免疫をもっていることが判明します。
 
「SNSで陰謀論を拡散している人々は『カルト運動』に関わっている(158ページ)」という分析はもっとも納得しました。確かに、コロナ禍で陰謀論を拡散していたのは法輪功系の『大紀元』『エポック・タイムズ』、幸福の科学系メディア、統一教会系の『世界日報』、アメリカの福音派キリスト教メディアなど、カルト宗教系です。
 
一方で重要な指摘は「オカルトは世界を動かす」ということです。
町山智宏の『アメリカがカルトに乗っ取られた!中絶禁止、銃は野放し、暴走する政教分離』という本を読むと、少数派であるキリスト教福音派が現代アメリカ政治に強烈な影響を与えていることがわかります。
 

 
 
日本の政治は、統一教会や神道系の『日本会議』、創価学会というフランスならカルト宗教とみなされる宗教勢力が自公政権のバックボーンとなり、少子化・ジェンダー政策に大きな影響を与えています。
 
戦前の日本では、神道系オカルトや日蓮宗仏教オカルト、反ユダヤ主義陰謀論が極右軍人の間で流行したことが敗戦の一因となったことは否めません。
 
この文献で面白かったのは「ニューエイジ実践尺度」です。
 
一、ヨガ、太極拳、気功などの東洋的なスピリチュアリティの技法。
二、瞑想。
三、レイキ(霊気。手のひらからエネルギーを流す「手かざし」療法)。
四、代替医療(ホメオパシー、鍼灸など)。
五、指圧のようなマッサージ技術。
六、サイキックまたはスピリチュアルヒーリング。
七、リバーシング(出生の記憶を再体験する呼吸法)または前世療法(出生以前まで遡さかのぼる催眠療法)。
八、タロット、易、ルーンなどによる占い。
九、夢診断またはドリームワーク(セラピストが夢を診断するのではなく、自分自身で夢の内容を探索し意味を発見する営み)。
十、霊媒師、霊能者、易者に相談すること。
十一、占星術師に相談すること、または自分の占星図を読み解くこと。
十二、スピリチュアリティに関する講演やワークショップに参加すること。
 
 
鍼灸分野のプラクティショナーで、ニューエイジ実践尺度が当てはまる方は多いと思います。
 
 

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