2026年8月16日に大阪で開催された日本小児はり学会主催の「スティーブン・バーチ先生の特別な小児はり研修会」に参加させていただきました。
以下の論文からも、バーチ先生は「患者の感じる(鍼麻酔の)得気」と「古典の施術者の手に感じる得気」を厳密に区別されていることがわかります。
Historical and clinical perspectives on de qi: exposing limitations in the scientific study of de qi
(得気の歴史的・臨床的パースペクティブ:得気の科学的研究の限界を探求する)
Stephen Birch
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PMID: 25423501 DOI: 10.1089/acm.2014.0267
鍼治療に関する初期の歴史的文献を概観すると、文献では「得気」とその関連概念である「気至」は施術者による現象として記述される傾向があり、これは熟練した施術者の領域(技術に基づくもの)に属するものであることがわかる。アジアと西洋の多くの現代の著者も、鍼治療における得気における施術者による体験の重要性を述べており、これは鍼治療の効果の中核をなすものである可能性を示唆している。得気に関する科学的研究を概観すると、質的研究は得気の患者側の側面にほぼ限定的に焦点を当てており、量的研究は得気のみに焦点を当てている。従って得気現象に関する現在の研究にはギャップが存在し、これは鍼治療全般の研究における弱点を示している可能性がある。
セミナーでも中国式の得気と日本鍼灸の違いを強調されていました。
バーチ先生の小児はりの調気鍼のストローキングとタッピングを実際に前腕に受け、さらに井上恵理式バネ式テイ鍼の響き感を体験できたのは幸運でした。井上恵理式バネ式テイ鍼の響き感は、ものすごく繊細な感覚でした。
懇親会の際に、バーチ先生に間中喜雄先生の『Chasing the Dragon’s Tail: Theory and Practice of Acupuncture in the Work of Yoshio Manaka(龍のしっぽを追いかけて:間中喜雄の鍼の臨床の理論)』について感想をお伝えできたのと、「君はテイ鍼のデモをしている最中に、あの(繊細な)響きを感じていたよね。こちらも君が感じていることを感じていたよ」と言っていただいたことに感動しました。
バーチ先生は最初、アメリカ鍼灸の父と呼ばれ、承淡安先生の孫弟子でもある蘇天佑先生に学び、次にハーバード大学のプラセボ研究者で鍼灸師のテッド・カプチュク教授に学んだそうです。しかし、感覚が繊細なバーチ先生は、中国鍼の響き感である得気が苦手だったそうです。
1982年にハーバード大学の松本岐子先生に日本鍼灸を受けて、日本鍼灸に感動したそうです。この時期にバーチ先生は松本岐子先生と『Hara Diagnosis: Reflections on the Sea(1988)』と、『Extraordinary Vessels(1993)』を共著で出版しています。
バーチ先生は、小児はりについて間中喜雄先生から(!)奇経と井上式バネ式てい鍼を学びます。この時期の間中喜雄先生のイオンパンピング療法は『Chasing the Dragon’s Tail: Theory and Practice of Acupuncture in the Work of Yoshio Manaka(龍のしっぽを追いかけて:間中喜雄の鍼の臨床の理論)』になっています。
バーチ先生は福島弘道先生(東洋はり学会初代会長)、高井章博先生(東洋はり学会第2代会長)、柳下登志夫先生(東洋はり学会第3代会長)に、接触鍼を学びました。
2011年には『Shonishin: Japanese Pediatric Acupuncture(小児鍼:日本の小児はり)』を、そして2025年には、『Restoring Order in Health and Chinese Medicine : Studies of the Development and Use of Qi and the Channels(中医学と健康における秩序の再構築:氣および経絡の生成と臨床利用に関する研究)』を出版し、温竹灸の開発者であるオラン・キヴィディ先生とYouTubeで解説しています。
キヴィディ先生との共著『Manaka Made Simple: A Step-by-Step Guide to Dr Manaka’s System of Japanese Acupuncture and Moxibustion』を2026年2月に出版されたことを懇親会で教えていただきました。
私はイオン・パンピング療法を愛用していますが、日本国内では一時期、イオンパンピング・コードが購入できない状況でした。間中賞もなくなってしまい、間中先生のレガシーがなくなっていくようで非常に残念に思っていましたが、海外では間中喜雄先生の技術が受け継がれているようです。
今回のバーチ先生の井上式テイ鍼も間中先生から受け継がれた繊細な技術で、間中先生の技術と初めて近いつながりを持てた感覚で、本当にうれしいです。主催の日本小児はり学会、ならびに運営スタッフの先生方に感謝です。
Acupuncture as a Treatment Within Integrative Health for Palliative Care: A Brief Narrative Review of Evidence and Recommendations
(緩和ケアにおける統合医療の一環としての鍼治療:エビデンスと推奨事項に関する簡潔な概説)
Stephen Birch et al, J Altern Complement Med. 2020 Sep;26(9):784-791.
Volume 26, Issue 9
https://doi.org/10.1089/acm.2020.0032
※ 結果:鍼治療は緩和ケアにおいて17の適応症について新たなエビデンスを示している。
Prospective, non-randomised, open-label pilot trial assessing feasibility, safety and treatment success of acupuncture in children with functional constipation: ACU-PILOT study protocol
(機能性便秘の小児における鍼治療の実現可能性、安全性、および治療効果を評価する前向き非無作為化オープンラベルパイロット試験:ACU-PILOT研究プロトコル)
Stephen Birch et al, BMJ Open. 2025 Nov 11;15(11):e109425. doi: 10.1136/bmjopen-2025-109425
※ 日本の伝統的な鍼灸の原則に従って非侵襲性の小児鍼と圧迫鍼の手技で治療を受ける。
これにはバーチ先生が講義中に言われていた小児の便秘に対して、東洋はり式の経絡治療の井上式テイ鍼で太淵・太白や、曲泉・陰谷を補法して、小児はりして、パイオネックスを貼るというプロトコルが書かれています。日本の小児はりやテイ鍼などがオランダのアムステルダムで臨床試験されるのは画期的なことです。
講義で話題になっていた、スプリングの強さを変えることができるスプリング・てい鍼(Tsumo Shin)はインターネットで購入できるようです。
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