【BOOK】『治療(CHIRYO)2024年106巻5月号 プライマリ・ケアにおける腰痛診療』

『治療(CHIRYO)-プライマリ・ケアにおける腰痛診療-』
2024年5月号
南山堂 (2024/5/1)

これは購入して、大当たりでした。
小林只先生の「fasciaに注目した腰殿部痛へのアプローチ」を読むために購入しましたが、まず「腰痛・殿部痛の総論」が素晴らしいです。2016年の山口大学の鈴木秀典先生の「山口県・腰痛スタディ」が書き出しです。


2016年「整形外科医からみた非特異性腰痛 ~山口県腰痛study~」
鈴木秀典 et al.
Journal of Spine Research 7(3): 753-753, 2016.


むかし、「腰痛の80パーセントは原因不明」といわれていました。
しかし、山口大学医学部の鈴木秀典先生の研究により、実際には80パーセントの腰痛の原因が特定可能と判明しました。この2016年「山口県・腰痛スタディ」の紹介のあと、「筋膜間に対する生理食塩水注射の鎮痛効果を示した論文を発端に、運動器疼痛の発生源として、筋膜・靭帯・腱などを含むFasciaが注目されるようになった」「Fasicaの剥離が組織の弛緩と鎮痛効果を生むという研究がすすんだ」と論じられています。


2016年 小林只
「筋膜性疼痛症候群に対する超音波検査下での重炭酸リンゲル液、生理食塩水、局所麻酔薬の筋膜間注入の効果 -2つの前向きランダム化二重盲検試験-」
Effects of interfascial injection of bicarbonated Ringer’s solution, physiological saline and local anesthetic under ultrasonography for myofascial pain syndrome -Two prospective, randomized, double-blinded trials-
Kobayashi, Tadashi
『金沢大学十全医学会雑誌』125 (2), 40-49, 2016-06-01


腰痛の分類の筆頭にfascia性を挙げられています。頭の中が整理されていきます。遠藤建史先生の素晴らしい論文「腰痛・殿部痛の総論」は、これからの腰痛論のゴールドスタンダードになってほしいです。

そして、2024年の腰痛診療の最前線を理解すると、現状の鍼灸師の教育の問題が明確になります。まず結合組織、ファシャに関する解剖学の基礎知識(現場の臨床家レベル)を学んでいません。スーパーフィシャル・ファシャ、ディープ・ファシャ、筋外膜の違いを理解していません。

2024年レベルの鍼灸臨床に大切な結合組織、ファシャについて『解剖学(構造機能学)』の教科書の最初の「組織」の部分で20分から1時間くらいで通り過ぎるのが現状のカリキュラムです。鍼灸臨床家が後進の方に伝える際には、時間をさいて基礎から説明する以外に方法がありません。また、「山口県腰痛study」や「Fasciaが原因の腰痛」などの2016年以降の腰痛のパラダイムシフトを知らないため、これも説明する必要があります。わたしは1994年に菊池臣一先生の『腰痛をめぐる常識の嘘』で読んで知りましたが、今も30年前のモデルが主流である現状には疑問を感じます。


『治療(CHIRYO)-プライマリ・ケアにおける腰痛診療-』2024年5月号
南山堂 (2024/5/1)
《目次》
プライマリ・ケアにおける腰痛診療■総論
腰痛・殿部痛の総論(遠藤健史)
手術適応となる腰痛(洞口 敬)
運動器以外の腰痛(小田川誠治)
■診断と治療
殿部痛の診断と治療(亀田雅博)
下肢痛を伴う腰痛の診断と治療(谷掛洋平)
(小林 只)
圧迫骨折の診断と治療(城田祥吾)
エコーガイド下腰部・仙骨硬膜外ブロック(前田 学,他)
仙腸関節障害に対するSwing-石黒法(石黒 隆)
上殿皮神経障害による腰痛(藤原史明,他)
足からくる腰痛(岡部大地)
腰痛に対する運動療法(辻村孝之)
腰痛に対する物理療法(渡邉久士,他)
腰痛に対する鍼灸療法(寺澤佳洋)
腰痛に対する認知行動療法(水野泰行)
腰痛に対する装具療法(池上慶篤)
腰痛患者の生活指導(並木宏文)
腰痛のセルフケア(須田万勢,他)

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