2016年 上海中医薬大学と上海市鍼灸経絡研究所の論文
「『弁証論治』ということばの語源を考える」
“辨证论治”词语源流考
刘佳缘,王宇,陈艳焦,杨永清
上海中医薬雑誌 2016年第 50卷第 6期
「弁証論治」「弁証施治」という言葉は第2次世界大戦後に共産党が支配する中華人民共和国で創られた造語です。
「中医学」という言葉も同じです。
中華民国時代は中国伝統医学のことを「国医」と呼んでいました。この論文でも、1955年の任応秋先生と秦伯未先生が「中医弁証論治」を創ったという史実を明記しています。
肝欝気滞証は類似概念は清代や中華民国時代にもありましたが、理論的に整理されたのは第2次世界大戦後です。
鍼灸師の立場としては「肝欝気滞証」の発明によってシャープに見えてきたものがあるので、臨床的には使える新理論であり、中医学と弁証論治は素晴らしい「OSソフト」だと思います。
ただ、日本の鍼灸師としては、血の混じった痰と咳があり、体重が減少して微熱があれば、肺陰虚で弁証論治して鍼灸治療をするより、まず結核や肺がんを疑って病院で精密検査をすすめるべきです。
そう考えると、肝胆湿熱証で黄疸が出ていたら当然、肝炎を疑い、膀胱湿熱証で血尿が出ていたら、まず病院で精密検査で、臓腑弁証のほとんどは鑑別すべき疾患なので、西洋医学の鍼灸不適応疾患の鑑別のスキルがまず求められます。おかげでこの数年、レッドフラッグスの勉強ばかりしています。
2019年のWHO-ICD11の国際疾病分類に中医学の弁証論治が入ったとしても、それが本当かどうかは未検証です。ただ、せっかく整理されたので、さらに自分で学問的に検証して、自分の臨床で使える概念に整理しなおすだけの話です。
この上海中医薬大学と上海市鍼灸経絡研究所の論文は、歴史をよく調査していて優れていると思います。
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