2019年3月11日 ウエストヴァージニア州の新聞‘Parsons Advocate’
「ウェストヴァージニア州議会は、依存症治療とトラウマ回復の法案を通過させた」
WV LEGISLATURE PASSES BILL FOR ADDICTION TREATMENT AND RECOVERY FROM TRAUMA
以下、引用。
ウェストヴァージニア州議会は2324法案を通過させ、ジム・ジャスティス知事は先週、法案にサインをした。それによりトレーニングされたプロフェッショナルが NADAプロトコルと戦場鍼(バトルフィールド・アキュパンクチャー)プロトコルをトラウマや依存症やストレスや慢性痛に使えることになった。
NADAプロトコルは1973年にヘロイン中毒禍のはびこるニューヨークで開発され、トラウマ回復や災害からの回復、ストレス緩和に有用であることが判明している。それはアルコール中毒やニコチン・タバコ中毒、ドラッグ中毒、セックス中毒、ギャンブル中毒や食物中毒に用いられている。
NADAプロトコルは慢性痛に有用であることが判明している。同じように戦場鍼(バトルフィールド・アキュパンクチャー)プロトコルは2001年に開発され、耳ツボを急性疼痛や慢性疼痛に用いている。退役軍人省の多くの臨床家に用いられ、あちこちでトレーニングされている。新しいウェストヴァージニア州法はNADAプロトコルと戦場鍼プロトコルを使用するアキュデトックス・スペシャリストに免許を与える。
以前のウエスト・ヴァージニア州では、1800時間の教育を受けたライセンスド・アキュパンクチャリスト(免許鍼師)および、医師およびカイロプラクターと卒後教育で鍼を使用できる理学療法士(PT)にライセンスを与えていた。新法は看護師、ナース・プラクティショナー、フィジシャンアシスタント、ソーシャルワーカー、セラピスト、サイコロジスト、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、救急救命士(EMT)およびトレーニングを受けた刑務所の看守にNADAプロトコルと戦場鍼プロトコルという2つの特定プロトコルの使用を認める。
ニューヨーク・サウスブロンクスのリンカーン病院の医師マイケル・スミスが、黒人解放政治団体ブラックパンサー党の活動の一環としてドラッグ依存症へのメサドンの代わりに中国式の耳鍼を用いました。最初は中国式耳穴の「肺」のツボのみを使っていましたが、精神安定作用のある中国式耳穴の「神門」が加えられ、試行錯誤して現在のような「肺」「神門」「交感」「肝」「腎」の5穴に刺鍼するNADAプロトコルとなりました。
戦場鍼(バトルフィールド・アキュパンクチャー)はアメリカ空軍の軍医リチャード・ニムツォウが開発した5つの耳穴を用いた治療法です。5つの耳ツボはオメガ2、神門、ポイントゼロ、視床、帯状回で、使用する鍼はポール・ノジェ博士が開発した半永久鍼(ASP)です。中国式耳鍼にはオメガ2やポイントゼロといった耳ツボは存在しません。
どちらも5穴の誰でも出来る簡単治療だからといって、ソーシャルワーカーや刑務所の看守も鍼をうてるわけです・・・。アメリカ空軍は医師でも鍼師でもない衛生兵が短期間のトレーニングで戦場鍼を使っています。
これはアメリカだけではありません。イギリスも看護師や助産師が妊婦の吐き気止めに内関に鍼をうって、保険支払いまで認められていますが、ワンデイセミナーで1日で研修を終えます・・・。
アメリカの理学療法士(PT)は週末の土曜日の夜に2時間×10回=20時間程度の鍼実習でトリガーポイント・ドライニードリング鍼療法をやっています。7時間×3日=21時間の短期集中コースもあります。素人のアルバイトが作っても一定の品質になるマニュアルでつくった「マクドナルド鍼灸」です。
私はフランスのラファエル・ノジェ先生の本物の耳介療法のセミナーを受けたことがありますが、最初はルネサンス期画家のヒエロニムス・ボスの『快楽の園』の耳に悪魔が針を突き刺している絵画の解説からセミナー講義が始まり、ものすごい繊細な脈診による耳穴決定など、芸術ともいえる超絶テクニックに感動しました。
フランスの天才女鍼師と呼ばれる耳鍼専門家のナディア・ヴォルフ先生はフランス料理の皇帝とよばれる故ジョエル・ロブションやファッション界の帝王、故カール・ラガーフェルドが患者でした。ラガーフェルドやロブションのような芸術家と対等に話をして人間的に認められるというのは凄いことだと思います。柳谷素霊がピカソに鍼をしたのも有名な話です。フランスに鍼をもちこんだ鍼師、スリエ・ド・モラン先生はカンディンスキーやジャン・コクトーが患者でした。
耳鍼はラファエル・ノジェ先生やナディア・ヴォルフ先生のような芸術的な超絶テクニックやフランス料理のような繊細な世界もあれば、アメリカのウエストヴァージニア州のように刑務所の看守やソーシャルワーカーでも心理学者でも誰でも出来るNADAプロトコルや戦場鍼プロトコルのようなマクドナルド化された鍼灸の世界もあります。
現代は「誰が鍼をうつべきなのか。どのような教育と実技トレーニングを受け、どのような資格・免許を得て、どのような卒後教育を受けるべきなのか」を考えずにはいられない時代です。
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