2019年4月5日発売の『ゴルゴ13 192 軍隊を持たぬ国 』です。巻頭の「未病」は中国と韓国の鍼灸の標準化をめぐる争いの中で韓国鍼灸学会の副会長が中国鍼灸学会の会長の暗殺をゴルゴ13に依頼するというストーリーです。
以下の2015年の日本の記事は当時の雰囲気を伝えていると思います。
2015年6月19日
「東洋伝統医学の正式名称『伝統中医学』に、中国が主導権:ISO専門委員会」
http://kenko100.jp/articles/150619003507/
以下、引用。
国際標準化機構(ISO)が定める国際規格は国際的な取引や知的財産権の獲得などで非常に重要となっている。そのISOでは現在、日本や中国などの東アジアで普及している伝統医学の標準化について話し合われているのをご存じだろうか。その委員会の正式名称が、6月初旬に北京で開催された会合で、中国の主張していた「伝統中医学(TCM=Traditional Chinese Medicine)」に決定したと6月12~14日に富山市で開かれた日本東洋医学会の会合で報告された。中国はISOに自国の利益を前提とした提案しており、その通りに国際規格が作られた場合、日本や韓国などの不利益になるだけでなく、独自に発展してきた治療法がなくなってしまうことも懸念されている。
【国策で動く中国、政府の支援ない日本】
ISOはカメラの感度から会社のマネジメントシステムまでさまざまな国際規格を定めている組織だ。一方、東アジアの伝統医学は日本では漢方医学や東洋医学と呼ばれているが、中国や韓国など各国で独自に発展した部分があり、内容はそれぞれで少しずつ異なる。
中国は東アジア伝統医学の国際標準化に当たって国策として動いており、2008年にはISOの保健医療情報技術委員会(TC215)に自国の「伝統中医学」を国際標準にするよう申請。「伝統中医学」ではなく「伝統医学」として国際標準化を目指すことが決まって却下されると、2009年に新たな委員会(TC249)の設置を申請して承認された。
こうした経緯があり、TC249は自国の利となる国際標準化を強い姿勢で進めようとする中国が主導権を握る。中国は国費としてTC249へ年間500万元(約9,900万円)の予算が組まれており、こうした豊富な資金を利用し、旅費や食費、宿泊費を提供して対立国以外の各国代表を非公式会議に招き、賛同国を増やす活動をしているという。また、公式会議の場では「中国側は気に入らないことがあると、(公用語が英語でも)政府の人間が中国語で20分もの演説を行う」(WHO会議の日本代表者)など、強引に持論を展開する場面が少なくないとの証言もある。
こうした状況のため、TC249の会議名もこれまで中国が主張する「伝統中医学(仮称)」とされてきた。一方、日本は政府のバックアップがないこともあり、苦戦を強いられている状態。その中で韓国と連携し、3カ国の主張を取り入れた「伝統医学:中医学、漢方、韓医学」を提案していた。
【強行採決に日本は棄権】
今回のTC249の会合(第6回会議)には中国、韓国、日本、米国、タイ、ドイツ、オーストラリア、カナダ(参加人数順)など12カ国が参加した。日本代表メンバーを務めた東京有明医療大学保健医療学部の東郷俊宏教授によると、各国から提案された8案から投票によって「伝統中医学」と「伝統医学:中医学、漢方、韓医学」の2案での決選投票となった。
決選投票は当初、今会議終了後のTC249全参加国(21カ国)による電子投票の形を取る予定だったが、急遽、今会議での投票が強行。日本は「投票の枠組みに疑問がある」として棄権票を投じたが、結局「伝統中医学」が8票を集め、正式名称として推奨されることが決まったという。
一方で、TC249では粗雑な規格案が多いほか、中国からは鍼そのものの品質や安全性だけでなく、鍼治療の安全性も規格化の対象にしようとの提案があった。これに対しては是正するよう求める日本の主張が通ったようだ。
東郷教授は今会議を振り返り、「失うものもあったが、将来に向け欧米諸国と協調しながら高品質の規格をつくり、人類の福祉に寄与していくことが重要とあらためて感じた」と述べた。
【鍼灸の標準化に関する参考文献】
「日本鍼灸に関する東京宣言2011
21世紀における日本及び世界のより良い医療に貢献するために」
『全日本鍼灸学会雑誌』Vol. 62 (2012) No. 1 p. 2-11
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam/62/1/62_2/_pdf
「鍼灸領域における国内外の標準化の現況 国民への責任説明を果たすために」
東郷 俊宏
『全日本鍼灸学会雑誌』Vol. 62 (2012) No. 2 p. 114-124
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam/62/2/62_114/_pdf
「パネルディスカッション日本の鍼灸を取り巻く国際情勢」
『全日本鍼灸学会雑誌』Vol. 63 (2013) No. 1 p. 17-32
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam/63/1/63_17/_pdf
「ISO/TC249 第4回全体会議の報告」
『鍼灸OSAKA』Vol.29 No.2 193-198 (2013)
http://www.jsam.jp/pdflib/LrqFtQ.pdf
「国際標準化と日本鍼灸-国内規格とISO- (第4回ISO/TC249全体会議報告)
東郷 俊宏et al.
『全日本鍼灸学会雑誌』
Vol. 64 (2014) No. 2 p. 90-103
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam/64/2/64_90/_pdf
TC249は2010年6月に中国の北京(第1回)、2011年にオランダのハーグ(第2回)、2012年に韓国の大田(第3回)、2013年に南アフリカのダーバン(第4回)、2014年5月に日本の京都(第5回)で開催されました。
2014年2月にはISOで単回使い捨てステンレス鍼が定義されました。
2015年
「日本鍼灸を明日へ伝える」
形井 秀一
全日本鍼灸学会雑誌
2015年 65 巻 4 号 242-255
https://www.jstage.jst.go.jp/…/jj…/65/4/65_242/_pdf/-char/ja
『WFAS Tokyo/Tsukuba 2016を終えて 「ローカル化とグローバル化」 の推進を!』
形井 秀一
全日本鍼灸学会雑誌
2017年 67 巻 1 号 2
https://www.jstage.jst.go.jp/…/jjsam/67/1/67_2/_pdf/-char/ja
「東洋医学におけるICD-11活用」
渡辺 賢治
『保健医療科学』
2018年 67 巻 5 号 471-479
https://www.jstage.jst.go.jp/…/jn…/67/5/67_471/_pdf/-char/ja
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