頭鍼療法の起源と沢田流

 

以前、中国の『頭鍼療法の起源と発展』に関する記事で、「1958年に日本の代田文誌が上海中医雑誌に百会や前頂による足底痛治療を書いたものが中国における頭皮鍼の嚆矢である」と書きました。

头针疗法的起源和发展
中医中药网

 

奥野繁生先生から「以下の論文がオリジナルではないか?」というご指摘をいただきました。本当に勉強になります。ありがとうございます。

 

「頭部刺鍼が体部圧痛及び感覚過敏に及ぼす影響 刺鍼が圧痛に及ぼす影響の研究 (第4報)」
代田 文誌『日本鍼灸治療学会誌』1957 年 6 巻 2 号 p. 1-6

 

以前から『鍼灸臨床生情報(1)(2)』の中に、目窓や正営、承霊を使った謎の頭皮鍼灸が大量に書かれているのは研究したことがありました。焦氏頭鍼や方氏頭鍼、山元式新頭鍼(YNSA)とは全く違う使い方で、しかも灸が中心なので気になっていました。まさに代田文誌のオリジナル頭鍼で、しかも中国の焦氏頭鍼や方氏頭鍼よりも前に発表されていたことはあまり鍼灸業界に知られていないと思い、知識の共有の意義があると考え、奥野繁生先生のご許可をいただいた上で、貴重な情報を紹介させていただきます。

 

以下の論文もまとめのような形になっています。澤田流の流派内では有名なのでしょうが、少なくともわたしは奥野先生に教えていただくまで全く知りませんでした。

「頭部刺針と体部圧痛との関係」
代田 文誌『日本鍼灸治療学会誌』
1967 年 16 巻 1 号 p. 21-25

 

この機会に『鍼灸臨床生情報(1)』『鍼灸臨床生情報(2)』で目窓から調べ始めました。まさに足底痛がよく出てくるのですが、顎関節症、眼瞼痙攣、頚部痛、肩痛(結帯障害)、臀部痛、頭痛とルールが発見できません。

 

正営は不眠、脳性麻痺の四肢の過緊張、目の奥の痛み、胃部不快感、五十肩、胸背部痛、背部痛、腰痛、膝痛、上肢のしびれ、上肢の痙性、ガン性疼痛、頭のモヤモヤ感です。代田先生は「正営に刺鍼すると胸腹部の圧痛や感覚過敏が軽減し、消滅する」と書かれています。

 

承霊は腹部・腰臀部の圧痛点、上肢のしびれ、股関節の痛みの症例です。代田先生のまとめは「承霊に刺鍼すると上肢の曲池、手三里、合谷・げき門、少海の、下肢の中封、三陰交、足三里などの圧痛が軽減・消失する」と書かれています。

 

百会や前頂、シン会に関する代田先生の論文の記述は非常にユニークですが、似た症例を発見できませんでした。代わりに「完骨の灸で腰痛を治療」を読み、わたしも坐骨神経痛の患者さんをYNSAで治療し、YNSAのG点(膝関節)でたまたま奏功した経験があり、印象深かったです。卒谷や天衝、頭きょう陰も『鍼灸臨床生情報』では腰痛やさまざまな病気に使っていますが、これはわたしも追試応用して奏功したことがあります。これは代田先生のオリジナル論文に掲載されていませんでした。

 

沢田流の頭皮鍼灸は、奥野先生から教えていただいた情報・論文なしには五里霧中で、ルールがまったく理解出来なかったのです。奥野先生からの貴重な情報により、ようやく理論が理解できました。

 

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奥野繁生先生の胸脇苦満の論文は蒙を啓かれました。

「中医の胸脇苦満と古方の胸脇苦満」
奥野 繁生
『中医臨床』32(1), 138-140, 2011-03

 

帯下のしん灸弁証論治
奥野繁生 (東医学研究会)
『東医学研究』 20-23 2002年01月25日

 

逆子の灸―至陰と張文仲―
奥野 繁生
日本醫史學雜誌 第 57 巻第 2 号(2011)
http://jsmh.umin.jp/journal/57-2/57-2_188.pdf

 

「脳為元神之府」をめぐって : 李時珍から張錫純へ
奥野 繁生
日本醫史學雜誌 57(1), 39-50, 2011-03-20
http://jsmh.umin.jp/journal/57-1/57-1_39.pdf

 

「下竄」について(一般口演,一般演題抄録,第41回日本歯科医史学会・第114回日本医史学会合同総会および学術大会)
奥野 繁生 , Shigeo OKUNO
日本歯科医史学会会誌 30(2), 140-140, 2013-04

 

「下竄」について
奥野 繁生 日本醫史學雜誌 第59巻第2号(2013)
http://jsmh.umin.jp/journal/59-2/59-2_212.pdf

 

劉完素と『西山群仙會眞記』
奧野 繁生
東方宗教 (121), 24-44, 2013-05

 

劉完素と『西山記』
奥野 繁生
日本醫史學雜誌
http://jsmh.umin.jp/journal/58-2/58-2_227.pdf

 

書評・新刊紹介 浦山きか著『中國醫書の文獻學的硏究』
奧野 繁生
東方宗教 = The Journal of eastern religions (125), 89-94, 2015-05

 

 

 

 

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