ウイルス感染後遺症

 

1974年「感冒後遺症の鍼灸良導絡療法に就いて」
太田 隣斉
『日本鍼灸良導絡医学会誌』
1974 年 4 巻 4 号 p. 27-30
https://www.jstage.jst.go.jp/…/ryo…/4/4/4_4_27/_pdf/-char/ja

感冒は日本での鍼灸治療の対象になりにくいと思いますが、感冒後遺症や感染症後遺症候群、
ウイルス感染後症候群については、日本の鍼灸師の先生方は臨床で扱っていると思います。
もっとも一般的なのは慢性疲労だと思います。

2005年「ウイルス感染後の疲労症候への鍼治療ー症例報告」
Acupuncture in the treatment of post viral fatigue syndrome–a case report.
Mears T. Acupunct Med. 2005 Sep;23(3):141-5.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16259313

 

 

漢方の分野では感冒の後のうつの治療が報告されています。

2005年「感冒後のうつ状態に対する竹ジョ温胆湯」の経験
天野 雅夫 広島・天野医院
『日本東洋醫學雜誌』 56(別冊), 183, 2005-04
https://ci.nii.ac.jp/naid/110004065654

 

 

ウイルス感染症のうつや不安症については、アメリカ退役軍人省のスティーブン・コフリン博士による素晴らしい論文があります。

2012年「不安とうつ:ウイルス疾患との関連」
Anxiety and Depression: Linkages with Viral Diseases
Steven S. Coughlin, PhD,
Public Health Rev. 2012; 34(2): 92.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4175921/

※この文献で扱うウイルス疾患は、インフルエンザA型やその他のインフルエンザ・ウイルス、水痘・帯状泡疹ウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペス・ウイルス、HIVヒト免疫不全ウイルスとC型肝炎である。

 

インフルエンザ・ウイルス感染の後にうつを経験する患者さんは存在します。C型肝炎ウイルス感染の患者さんはウイルス感染により認知障害や不安・うつ・倦怠感・睡眠障害をおこすことも判明してきました。

2015年「C型肝炎関連・神経認知的および神経精神的な障害:2015年の進歩」
Hepatitis C virus-associated neurocognitive and neuropsychiatric disorders: Advances in 2015.
Monaco S
World J Gastroenterol. 2015 Nov 14;21(42):11974-83. doi: 10.3748/wjg.v21.i42.11974.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4641119/

 

 

ウイルス感染症後の気管支過剰反応症候群や感染症後の咳嗽は鍼灸師や漢方医がよく扱うと思います。日本呼吸器科学会の咳嗽ガイドラインでかぜ症候群後遷延性咳嗽に対して漢方の麦門冬湯が推奨されています。

2009年「感冒後の咳嗽に小柴胡湯合麦門冬湯、子供の鼻血に荊芥連翹湯」
松本 一男東洋堂医院
『漢方の臨床』 56(8), 1371-1373, 2009-08-25
https://ci.nii.ac.jp/naid/10025103635

 

 

ウイルス感染症後の嗅覚障害やウイルス感染症後の味覚障害は頻繁に経験します。感冒後嗅覚障害は耳鼻科に来院する嗅覚障害の25%を占め、漢方治療などが行われています。

2014年「感冒後嗅覚障害」
近藤 健二
『におい・かおり環境学会誌』2014 年 45 巻 4 号 p. 271-277
https://www.jstage.jst.go.jp/…/jao/45/4/45_271/_pdf/-char/ja

 

 

ウイルス感染症後の関節痛もあります。蚊が媒介するチクングニア・ウイルスによるチクングニア熱や蚊が媒介するデング・ウイルスによるデング熱では感染症後遺症として2年以上のウイルス関節痛が起こることが知られていますが、インドでは鍼治療がおこなわれています。

2016年11月16日
「チクングニア熱と闘病したが、後遺症が残っている」
Fought chikungunya, but after-effects remain
http://www.tribuneindia.com/…/fought-chikunguny…/323833.html

 

以下、引用。

【発熱疾患後遺症患者のための無料キャンプ】
ドクターDNコトニスの3日間だけの無料鍼と医療キャンプが組織されている。デング熱やチクングニア熱の発熱後遺症はこのキャンプで治療される。

 

 

2016年のイギリス王立医学会にはウイルス関節痛の論文が掲載されています。

2016年「ウイルス関節痛」
Viral arthritis
Michael Marks,
Clin Med (Lond). 2016 Apr; 16(2): 129–134.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4868140/

 

 

感冒後の慢性疲労、ウイルス感染症後のうつ・不安などの精神症状、感冒後の遷延性咳嗽や気管支炎、感冒後嗅覚障害や、ウイルス感染症による関節痛などにも鍼灸は有効だと感じているのですが、症例報告や研究も少ない分野になります。

 

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