【レッドフラッグス】慢性頸部痛と高安動脈炎

 

2018年5月15日『日経メディカル』
「その若い女性の慢性頸部痛、高安動脈炎では?」

 

以下、引用。

改訂ガイドラインによれば、高安動脈炎の初発時に見られる主訴のうち頻度が高いのは、全身症状(発熱、全身倦怠感など)、頭頸部症状(頭痛、めまいなど)といった症状だが、これらは多くの疾患に共通するものであり、直ちに高安動脈炎を疑うことは難しい。

中岡氏が、高安動脈炎を疑うポイントとして挙げるのが、図3の8つの所見・特徴。例えば「上肢の血圧左右差」(10mmHg以上)、「上肢の跛行」という上肢症状や体幹部の疼痛(頸部痛、背部痛)は、初発患者に比較的よく見られる所見だ。上肢の血圧左右差は鎖骨下動脈の障害により生じる。「8つの所見で複数項目が該当すれば高安動脈炎を強く疑い、症状が持続する場合には血液検査でCRPや血沈などを調べて陽性ならば、高安動脈炎の可能性は高くなる」と中岡氏はアドバイスする。これらの症状で患者が受診する診療科は整形外科や耳鼻咽喉科など多岐にわたり、高安動脈炎の専門治療を行う循環器科やリウマチ内科に限らないことに留意が必要だ。

 

「高安動脈炎」では約10パーセントに頚部痛がみられるそうですが、頚部痛だけでなく「遷延する全身症状と疼痛」があるようです。
上肢の左右の橈骨動脈の差から「脈なし病」と呼ばれた時代もあり、鍼灸師の場合は発熱、頭頸部症状、遷延する全身性の疼痛、脈の左右差、上肢の血圧測定による左右差などぐらいしか高安動脈炎を疑う徴候が無いです。

鍼灸師だけでなく、医師も高安動脈炎の診断マーカーが存在しないため、平均して高安動脈炎と診断されるのに2年から11年かかっていることが問題となり、仮のレッドフラッグスが提案されています。

 

2011年オックスフォード大学のクオータリー・ジャーナル・オブ・メディスン(QJM)
「高安動脈炎:深刻な診断の遅れの結果」
Takayasu arteritis: severe consequences of delayed diagnosis
R. Nazareth J.C. Mason
QJM: An International Journal of Medicine, Volume 104, Issue 9, 1 September 2011, Pages 797–800, https://doi.org/10.1093/qjmed/hcq193

 

>40歳以下の高安動脈炎患者のレッドフラッグス
頸動脈痛、血管の絞扼、四肢の跛行、局所の脈拍の消失または減弱、高血圧、上肢の血圧の矛盾10㎜Hg以上、血管雑音、大動脈弁逆流、説明できない急性の反応(赤血球沈降速度またはC反応性プロテインの上昇)

もし高安動脈炎が疑われたら、四肢での血圧測定を命令し、末梢の脈拍を触診して血管雑音を聴診する。赤血球沈降速度やC反応性プロテインが上昇し、貧血というエビデンスは調べられるべきである。

 

つまり、鍼灸師にできるのは四肢での血圧測定と末梢の脈拍の触診までで、疑わしきは血管外科などがある病院への精密検査を勧めるという手順になると思います。

2017年総説論文「高安動脈炎」
渡部 芳子『日本血管外科学会雑誌 』 26 巻 (2017) 1 号 p. 25-31

 

 

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