JAMAの電気鍼論文:クレイグ・ペンス・テクニック

 

 

2020年10月27日『アメリカ医師会雑誌JAMAオープン』
「慢性腰痛の成人の痛みの重症度の変化に対する電気鍼療法と偽治療の効果
ランダム化臨床試験」
Effect of Electroacupuncture vs Sham Treatment on Change in Pain Severity Among Adults With Chronic Low Back Pain
A Randomized Clinical Trial
Jiang-Ti Kong, MD et al.
JAMA Netw Open. 2020;3(10):e2022787.
doi:10.1001/jamanetworkopen.2020.22787
 
 
 
著者は、名門スタンフォード大学医学部の麻酔科・周術期ペインメディスン部門の先生方ですが、治療内容をみて、これは効かないだろうと思いました。あまり鍼治療はしたことがないのではないでしょうか。
 
使っているのは、ウィリアム・クレイグ医師の開発したクレイグ・ペンス・テクニックという電気鍼テクニックで、私も8年くらい前に研究したことがあります。
 
1970年代にカナダ・トロントでウィリアム・クレイグ医師が開発したクレイグ・ペンス・テクニックの「PENS(ペンス)」とは、Percutaneous electrical nerve stimulation の略です。周波数を使い分ける電気鍼であり、腰痛、座骨神経痛、糖尿病性神経障害、頭痛、帯状疱疹後神経痛などの痛みに特化した電気鍼で、アメリカの民間保険会社、ブルーシールドやブルークロスが認めた歴史的な電気鍼です。
 
しかし、慢性腰痛にはこの論文の電気鍼治療法では取穴のスジが悪過ぎます。よくてもプラセボ程度で、実際、慢性腰痛の疼痛がとれていません。そもそもクレイグ先生は、カナダで中国人の先生から鍼を学んだ時、陰陽五行説や経絡学説を聞いて理解できなかったことから西洋医学の疼痛理論から独自にクレイグ・ペンス・テクニックを創ったので、教科書的な経穴で電気鍼の治療穴を取るのはクレイグ先生の本意ではないと思います。
 
クレイグ・ペンス・テクニックは、日本では2010年に下地恒毅先生(『刺激鎮痛のすべて』、新興医学出版社)と2011年に高橋秀則先生が紹介しただけです。

 
 
 
高橋先生の論文には、日本語では数少ないPENSの症例の写真が掲載されています。
 
 
2011年、高橋秀則「東洋医学と痛み治療」
『日本臨床麻酔学会誌』Vol. 31 (2011) No. 3 P 385-392
 
 
1999年JAMA「腰痛へのPENS:ランダム化クロスオーバー研究」
Percutaneous electrical nerve stimulation for low back pain: a randomized crossover study.
Ghoname EA, Craig WF、et al
JAMA. 1999 Mar 3;281(9):818-23.
 
 
1999年『ペイン』「座骨神経痛マネージメントのTENSに代わるPENS」
Percutaneous electrical nerve stimulation: an alternative to TENS in the management of sciatica.
Ghoname EA et al
Pain. 1999 Nov;83(2):193-9.
 
 
1998年国際麻酔科学会雑誌『アネスシージャ&アナルジーズィア』
「急性帯状泡疹への抗ウイルス薬の代替としてのPENS」
Percutaneous electrical nerve stimulation: an alternative to antiviral drugs for acute herpes zoster.
Ahmed HE, Craig WF,et al.
Anesth Analg. 1998 Oct;87(4):911-4.
 
 
2000年糖尿病ケア「糖尿病性神経障害への鎮痛治療としてのPENS」
Percutaneous electrical nerve stimulation: a novel analgesic therapy for diabetic neuropathic pain.
Hamza MA, Diabetes Care. 2000 Mar;23(3):365-70.
 
 
2000年『ヘディック(頭痛)』「頭痛の短期管理としてのPENS使用」
Use of percutaneous electrical nerve stimulation (PENS) in the short-term management of headache.
Ahmed HE
Headache. 2000 Apr;40(4):311-5.
 
 

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