2006年「情志病の経絡学基礎」
情志病的经络学基础
张建斌 王玲玲
《辽宁中医杂志》 2006年05期
以下、引用。
(1)手少陰の別絡=絡脈は名前を通里といい、腕を去ること1寸半、別れて上行して経にしたがい心中に入り、舌本につらなり、目系に属する。これが実すると支隔という胸膈が塞がった不快感となり、虚すれば不能言で言葉を発声できなくなる。
この論文では不能言で声が出ないのを癔症(あいしょう)イコール、昔のヒステリーと解釈しています。ヒステリーは現代の解離性障害、転換性障害、身体表現性障害の範疇に入ります。
DSM5の概念である身体症状症の一部に、従来の疼痛性障害が存在します。心理的ストレスによる慢性的な痛みのことであり、鍼灸師は昔のヒステリーや身体症状症の範疇の 疼痛性障害の概念を知っていると臨床で得をします。
「ICD-10とDSM-IVにおける身体表現性障害と心身症の概念」
中根 允文
『心身医学』1996 年 37 巻 1 号 p. 21-27
「DSM-5病名・用語翻訳ガイドライン」
『精神神経学雑誌』 第 116 巻 第 6 号(2014) 429‒457 頁
中国伝統医学では臓躁や百合病は昔のヒステリーの範疇に入ると思います。
「癔症15例の針刺治療」
针刺治疗癔症15例
刘英茹 王博
《中国针灸》 1997年09期
「臓躁86例の針刺治療」
针刺治疗脏躁86例
孙涛 郭玉荣
《针灸临床杂志》 1997年12期
「百合病の針灸治療の臨床研究」
针灸治疗百合病的临床研究
黄菁 《大众科技》 2017年10期
癔症、臓躁、百合病は鍼灸の得意な疾患だと思います。また、薄厥(はくけつ)や気厥(きけつ)などの厥証の概念も癔症の概念と重なります。
2001年「鍼灸による癔病の治療の臨床発展」
针灸治疗癔病的临床进展
麻春晴
《2001年全国中西医结合急救医学学术会议论文集》
,本病与祖国医学所称的“薄厥”、“气厥”、“脏躁”、“奔豚”、“梅核气”、“郁症”
以下、引用。
(2)手厥陰心包経の別脈の名を内関という。腕を去ること2寸で、両筋の間に出て、経にしたがいて心包絡・心系につらなる。実すれば心痛し、虚すれば煩心する。
(3)足陽明胃経の別脈(絡脈)の名前を豊隆という。外果から8寸はなれて、別れて足太陰脾経に走る。その別は脛骨外廉にしたがいて上は頭項に絡し、諸経の気と合流し、下は喉嗌(こういつ)に絡す。その病では、気逆すればすなわち喉痺(こうひ=のどの異物感・不快感)と卒瘖(そついん=声が出ない症状)となり、実すれば癲狂となる。虚すれば足が収まらずに弛緩し、足が痩せる。
足陽明の絡脈病でも、梅核気のような症状と失音(声が出ない)、癲狂などの精神症状があります。
以下、引用。
(4)足少陰腎経の別絡の名を大鍾とよぶ。まさに内果の後ろで踵にあり、わかれて太陽膀胱経に走る。その別は経にそって心包下に走り、外は腰脊を貫き、その病は気逆、煩悶である。
調べてみると『霊枢・経脈篇第10』だけでなく、『素問・繆刺論篇』でも絡脈病が書かれていました。手少陽三焦経の別絡(絡脈)である外関で、心煩があります。
邪客于手少阳之络,令人喉痹,舌倦口干,心烦,
《黄帝内经·素问》
缪刺论篇第六十三
『素問・繆刺論篇』 では足少陰腎経の別脈(絡脈)である大鍾に邪気があれば、のどの痛み、食べることができずに、理由なくよく怒り、気が上に走れば噴門の上にいくというのは、まさに更年期の梅核気と奔豚気ではないでしょうか。
邪客于足少阴之络,令人嗌痛,不可内食,无故善怒,气上走贲上。
《黄帝内经·素问》
缪刺论篇第六十三
『素問・繆刺論篇』 での足少陰腎経の別絡に邪気が入ると人をして突然の心痛とせしめ、 突然の脹満があり、胸脇支満となるのも、パニック障害の身体症状と似ています。
邪客于足少阴之络,令人卒心痛、暴胀、胸胁肢满
《黄帝内经·素问》
缪刺论篇第六十三
絡脈病を研究すると、より奔豚気や梅核気や身体表現性障害を理解できそうです。
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