【関西中医鍼灸研究会】肩こりと痃癖の分析

9月1日、関西中医鍼灸研究会において肩こりと痃癖の分析について講義を行いました。

西洋医学的な「肩こり」のメカニズムと先行研究、体性関連痛の研究の歴史、内臓体壁反射の研究の歴史、日本伝統医学(漢方)における痃癖(げんぺき)の歴史、現代の心身医学的な研究など、肩こりについてかなり深い部分までお伝えできたかと思います。

鍼灸師にとって肩こりは既知のように思われがちですが、西洋医学ヘッド帯や関連痛のメカニズムと東洋医学の弁証の部分で従来とはかなり違う視点を紹介しました。特に関連痛とメカニズム的思考、痃癖の本質的部分、さらに経絡弁証による思考法を皆さまの肩こりの分析にプラスしていただければ幸いです。

最後、もう少し実技の時間があればと思いました。感想やご意見がありましたら、お寄せいただければうれしく思います。
ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

以下に参考文献と内容を簡単にご紹介します。
詳しくは当日配布した資料の注釈に参考文献を掲載していますのでご参照ください。

1. 肩こりと痃癖の歴史

肩こりは英語や中国語には存在しません。
江戸時代は痃癖(げんぺき)と呼ばれ、本郷正豊の『鍼灸重宝記』にも「痃癖(肩こり)」の鍼灸治療の記述があります。
講義では隋の『諸病源候論』の「癖病」以降の「痃癖」概念の変遷と「肩癖(けんぺき)」→「けんびき」概念の歴史的変遷をお話ししました。

The Historical Origins of Katakori
栗山 茂久
KURIYAMA Shigehisa
Nichibunken Japan review : bulletin of the International Research Center for Japanese Studies 9, 127-149, 1997-01-01

白杉 悦雄
『冷えと肩こり 身体感覚の考古学 』
講談社選書メチエ2014/8/12

「肩こり」とその背景
矢野 忠
『全日本鍼灸学会雑誌』
1996 年 46 巻 2 号 p. 91-95

2.「肩こり」の中医学鍼灸弁証論治について

中医学鍼灸の立場からは、肩こりの鍼灸弁証論治について基礎と先行研究を知っておいたほうが良いです。

「中医鍼灸、そこが知りたい」
金子 朝彦
東洋学術出版社 (2011/01)

『〈総説〉肩こりの臨床–適切な診断と治療のために』
森本 昌宏
『近畿大学医学雑誌』 35(3-4), 151-156, 2010-12-01

『針灸学 臨床篇―日中共同編集』
天津中医学院・後藤学園
東洋学術出版社1993年

3. 肩こりのレッドフラッグ徴候

肩こりの臨床では狭心症・心筋梗塞の肩こり、肺尖部のパンコースト腫瘍、肺底部の横隔膜浸潤による肩こり、胆石症や胃潰瘍の肩こりなどの内臓性の肩こりおよび、そのメカニズムを解説できることが望ましいです。

「肩こり患者の病歴と身体診察」
仲田 和正 西伊豆病院
『JIM』 19巻4号 (2009年4月)pp.262-265 2009年4月15日

『肩こりの臨床―関連各科からのアプローチ』
森本 昌宏
克誠堂出版2013年

『鍼灸不適応疾患の鑑別と対策―66症例から学ぶ』
代田 文彦
医道の日本社1994年

4. 日本伝統医学(漢方)における痃癖の概念について

日本伝統医学(漢方)における痃癖と延年半夏湯の概念を学ぶと、日本人の体質にあった肩こり治療をより深く考えることができると思います。

「延年半夏湯について」
細野 史郎『日本東洋醫學會誌』Vol. 9 (1958) No. 4 P 127-142

「延年半夏湯の臨床的研究」
矢数 道明『日本東洋醫學會誌』Vol. 13 (1962) No. 2 P 59-64

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