グリア細胞と末梢神経再生

2019年1月10日公開 上海中医薬大学が『神経再生研究』に発表した
「顔面神経挫傷後の電気鍼による末梢神経再生とグリア細胞由来神経栄養因子発現のアップレギュレイト上方向性調節」
Electroacupuncture promotes peripheral nerve regeneration after facial nerve crush injury and upregulates the expression of glial cell-derived neurotrophic factor
Jing Fei et al.
Neural Regeneration Research
Year : 2019 | Volume : 14 | Issue : 4 | Page : 673-682

鍼治療におけるグリア細胞の役割について示唆するところの多い、画期的な論文だと思います。

現在、大きな話題になっているのが神経障害性疼痛であり、 従来は「神経細胞=ニューロン」ばかり研究されていましたが、その周囲のグリア細胞は注目されませんでした。

ところが、P2X4R受容体を研究するうちに神経障害性疼痛、慢性疼痛ではグリア細胞こそが主役であり、特にマクロファージ起源のミクログリア細胞が産生する因子が主役となることが判明しました。

これは、ニューロンからだけ見ていたらわからなかった事実であり、疼痛理解のパラダイム・シフトになります。

神経損傷が起こると脊髄内のミクログリア細胞が活性化し、ミクログリア細胞内のP2X4R受容体が活性化するとミクログリア細胞はBDNF(Brain Derived Neurotrophic Factor:脳由来神経成長因子)を放出し、脊髄第1層ニューロンを異常興奮させ、神経障害性疼痛となります。

電気鍼はGDNF(glial cell line derived neurotrophic factor:グリア細胞由来神経栄養因子)と細胞間吸着因子のカドヘリンを発現させることで末梢神経再生をうながします。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする