湖北省の熱敏灸+簿氏腹鍼

熱敏灸は、江西省の陳日新先生が2006年に発表されました。

熱敏灸の研究は『江西中医薬』と『江西中医薬大学報』が圧倒的に多いです。江西省は『中国鍼灸各家学説』を書いた魏稼先生のイメージしかありませんでした。

湖北省は、江西省の北にあります。洞庭湖の北にあり、湖北省武漢市に湖北中医薬大学があり、1979年創刊の『湖北中医雑誌』と1999年創刊の『湖北中医薬大学学報』があります。

【湖北省の熱敏灸論文】

2009年「熱敏灸による慢性便秘の治療効果の観察」
热敏灸治疗慢传输型便秘疗效观察
田宁
《湖北中医杂志》 2009年11期

2010年
热敏灸配合穴位注射治疗外感久咳56例
杨坤 胡锋 梁超 张唐法
《湖北中医杂志》 2010年09期

2010年
腹针合热敏灸治疗欧洲人疑难眼病验案三则
杨贤海 刘红 王江
《湖北中医学院学报》 2010年01期

2016年
热敏灸配合埋针治疗失眠的临床观察
吕彬 刘黎明
《湖北中医药大学学报》 2016年06期

印象的だったのは、2010年の論文で熱敏灸 と山西省の簿智雲先生の腹鍼を組み合わせて中心性漿液性脈絡網膜症などの眼科の難病を治療していたことです。腹針の眼点(中脘上5分の外3分)と風府・風池の熱敏灸を組み合わせていました。

山西省の簿智雲先生の腹鍼は、1970年代に簿智雲先生が座骨神経痛患者の気海(CV6)や関元(CV4)に刺鍼して座骨神経痛が消失した経験から研究し、1992年頃に完成した新治療法です。

最初は慢性疼痛に使われ、寝違い(落枕)、肩関節周囲炎、手根管症候群、膝痛、腰痛などに使われました。生物全息理論にもとづき、 顔面が中脘(CV12)、頸部が商曲(KI17:臍から上2寸。外0.5寸)から石関(KI18:臍から3寸。外0.5寸)、肩から上肢が滑肉門(ST24:臍から上1寸の胃経)から「上風湿点(滑肉門の外0.5寸・上0.5寸)」と「上風湿外点(滑肉門外1寸)」、下肢は外陵(ST26:臍の下1寸。外2寸)から「下風湿点(気海の外2.5寸)」・「下風湿下点(石門の外3寸)」で対応します。

私は使ったことはありませんが、中国の論文を読むための簿氏腹鍼の最低限は覚えています。

面白いのは、湖北省の2010年「熱敏灸+簿氏腹鍼」論文のあと、2014年頃から簿智雲先生の簿式腹針の鍼と背部兪穴の熱敏灸を組み合わせた論文が大量に発表されていることです。

中国は腹診が存在せず、清末から中華民国の時代に日本式腹診が輸入されました。江戸時代から日本漢方や日本鍼灸では腹診を重視し、後藤艮山や石坂宗哲、澤田健先生のように背部兪穴を伝統的によく使います。

それに対して、現代中医学は形式は弁証論治して、結局はどんな弁証でも合谷・内関・足三里・三陰交・太衝のビッグポイントに太い中国鍼で電撃的響きで刺鍼というのが「臨床試験にみられる中医薬大学の鍼灸」でした。

腹部の中脘・関元に浅く鍼をして置鍼して、そのあとに背部兪穴を中心とした反応点(熱敏点)にソフトな響きの棒灸をする「簿氏腹鍼+熱敏灸」スタイルというのは、結果として日本式鍼灸にものすごく似ています。少なくとも「手足の響きの強いツボに中国鍼で刺鍼」という現代中医薬大学スタイルよりは、臨床的効果が高いのではないかと推測しています。

臨床技術レベルの低下が極まった中医薬大学の鍼灸は、ツボの反応を重視する熱敏灸の導入により復活する可能性があると思います。

2014年「簿氏腹鍼と熱敏灸の結合による不眠症治療研究」(浙江省杭州)
薄氏腹针结合热敏灸治疗失眠临床研究 – 周运 著 – ‎2014新中医

2015年「腹鍼と風池の熱敏灸による顔面けいれん治療40例」(河南省)
腹针结合风池穴热敏灸治疗面肌痉挛40例
《河南中医》2015年 第12期

2017年「腹鍼と熱敏灸の結合による寒凝血お型原発性月経痛30例」(湖南省)
腹针结合热敏灸治疗寒凝血瘀型原发性痛经30例总结
《湖南中医杂志》2017年 第8期

2018年「熱敏灸と腹鍼療法と骨盤底筋トレーニングによる女性の腹圧性尿失禁治療」(陝西省)
热敏灸加腹针疗法联合盆底肌训练法治疗女性压力性尿
2018年 7月第 41卷第 4期 陕 西 中 医 药 大 学 学 报

地域も熱敏灸の創始者である陳日新先生は江西省で、最初の「熱敏灸+簿氏腹鍼」は湖北省ですが、浙江省・河南省・湖南省・陝西省と広がっています。

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