己亥の五之気と秋分

今年は秋分の後の9月29日から五運六気の「五之気」となります。

金元四大家、張従正著『儒門事親』五之気の記述をまとめたものです。
以下、引用。

【秋分以降の五之気】
秋分から小雪の間の五之気の病では喘息が多発し、嘔逆し、咳嗽や婦人の往来寒熱が起こり、小児は皮膚病となる。五之気の病では表裏双解・理気の小柴胡湯で半表半裏を治療するのが良い。

五行の金の季節に肺病の喘息や咳嗽が多発するのはわかります。ただ、往来寒熱は少陽胆経の病気です。

関西中医鍼灸研究会では10年ほど前から「秋の肝陽上亢・肝欝気滞がある」という議論がありました。これは秋に冷房が切れると体が勘違いをして春の肝陽上亢・肝欝気滞のような症状が出るというものです。

さらに秋は太陰の季節であり、陰虚の患者さんは陰虚症状が出やすくなります。800年前の張従正が指摘したように、五行の金が木を相克して起こるという側面もあるようです。秋はなぜか中年女性の往来寒熱の症状は出やすいです。西洋医学では自律神経失調症です。

往来寒熱は典型的な『傷寒論』の少陽病の症状であり、小柴胡湯が使われます。小柴胡湯は半表半裏を和解する方剤であり、少陽経を理気します。

個人的には、秋に往来寒熱や少陽病の症状はでやすいと感じています。秋はマッサージなどで理気すると良いし、鍼灸も同じ印象があります。

【燥金欝の病】
ゆえに民は咳逆を病み、心腹痛は鼡径部にひき、よく突然に痛み、かえって寝返りもできない。のどが乾き、顔はくすむ。これは五行の金が木を相克する病である。

これも陰虚による気逆・気滞の症状の印象があります。

【五之気】
9月23日の秋分から11月23日の小雪の間の五之気は陽明燥金と対応している。故に金気が旺盛となり、脈は細脈・微脈となる。

【燥金・肺・辛・清鍼】
肺は大腸と表裏し、西方は金であり、色は白であり、外は皮毛・鼻と応じて、気をめぐらせる。乾姜は辛熱、生姜は辛温、薄荷は辛涼(であり、肺病の治療に用いる)。もろもろの気欝はみな肺金に属する。その治療法は清法、清隔、利小便、解表発汗である。肺経の井穴の少商を刺す。灸もまた同じである。

これも秋は気欝が起こりやすいという見解です。秋の治則は清法、清隔、利小便、解表発汗というのは印象的です。

2019年は己亥(つちのと・い)の歳です。五運六気学説では土運不及で厥陰風木司天、少陽相火在泉となります。 大暑の午日(8月1日)から秋分の辰日(9月29日)までは四の気であり、主気は太陰湿土ですが客気は少陰君火であり、蒸し暑いという予測は当たっていた気がします。

五の気は秋分の初己(9月29日)から小雪の初卯(11月26日)までの60日余りであり、主気は陽明燥金であり、客気は太陰湿土であり、土運であり、主運と客気が土で重なるため、燥湿はさらにあらそい、沈陰がすなわち広がり、寒気が体に及び、風雨がすなわちめぐる。太陰の湿気を治療するが宜しい。甘みで補い、苦味で瀉し、甘味でこれを緩和する。歳穀は丹であり、間穀は麻であり、湿邪をよく制すれば害をなすことはない。

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