慢性扁桃炎の鍼灸

セミナーに参加いただいたある先生に扁桃炎の相談を受けて、謝強先生の新穴、開音1号穴や咽安1号穴に加えて、前回のセミナーでの遠隔治療をアドバイスしたところ、うまくいったようです。

慢性反復性扁桃炎の相談を受けることは多いですが、自分の答えが本当にエビデンスに基づく知識なのかを検証です。日本語論文では、以下が勉強になりました。


「習慣性扁桃炎の発症病態と扁桃摘出術の適応と有効性」
藤原 啓次, et al.『口腔・咽頭科』2003 年 15 巻 3 号 p. 379-382

「扁桃摘出術は抗菌薬治療よりも優れているのか?」
藤原 啓次『口腔・咽頭科』2008 年 20 巻 2 号 p. 197-201

コクランライブラリーも調べました。

コクラン共同計画「急性反復性扁桃炎または慢性扁桃炎の扁桃除去外科手術」
Surgical removal of the tonsils (tonsillectomy) for chronic or recurrent acute tonsillitis

※成人の扁桃除去手術と非手術では、その効果を確定するのに十分な情報がなかった。研究によれば、手術の影響は中程度で多くの患者は非手術グループで自然治癒する。

「鍼治療による反復性扁桃炎の予防に関する臨床的研究 (第1報)」
吉川 恵士, 西條 一止,et al.
『全日本鍼灸学会雑誌』1982 年 31 巻 4 号 p. 372-380

「鍼治療による反復性扁桃炎の予防に関する臨床的研究 (第2報)」
吉川 恵士, 西條 一止,et al.
『全日本鍼灸学会雑誌』1984 年 34 巻 1 号 p. 8-14

「鍼治療による反復性扁桃炎の予防に関する臨床的研究 (第3報)」
吉川 恵士, 西條 一止,et al.
『全日本鍼灸学会雑誌』1984 年 34 巻 1 号 p. 15-22

英語圏では、ドイツ、ミュンヘン大学の急性扁桃炎・咽頭炎の鍼のランダム化比較試験がありましたが結果は否定的です。大腸経だけで1穴の治療ならこんなものだと思います。

2009年「大腸経の1穴の鍼治療:急性扁桃炎・咽頭炎のランダム化比較試験」
A single point acupuncture treatment at large intestine meridian: a randomized controlled trial in acute tonsillitis and pharyngitis.
Clin J Pain. 2009 Sep;25(7):624-31.

中国語の扁桃体炎です。

2019年「天容(SI17)穴への針刺による小児慢性扁桃炎の治療の効果の観察」
快速针刺天容穴为主治疗小儿慢性扁桃体炎疗效观察
王春兰 魏娟
《中国针灸学会痛症专业委员会成立大会、第一届京鲁针灸高峰论坛暨山东针灸学会第十一届学术年会论文集》2019年

※主穴:天容穴,配穴:扶突、人迎、天鼎

先生には「少商や商陽は教科書に書いてありますが、効かないこともあったので反応をみたほうが良いです」とお伝えしました。

2001年「少商(LU11)、商陽(LI1)の2穴の放血による慢性扁桃炎68例の治療」
少商、商阳二穴放血治疗慢性扁桃腺炎68例
李良修
《中医外治杂志》 2001年06期

1996年「合谷(LI4)、少商(LU11)、頬車(ST6)の針刺による急性扁桃炎の治療」
針刺合谷、少商、頰車治疗急性扁桃腺炎
李树彬 《天津医药》 1966年04期

今、研究している「手鍼」を調べましたが、手鍼の咽喉点の存在さえ忘れていました。そういえば、手鍼の扁桃体もありましたが、忘れていました。

2001年「手針咽喉点による急性咽頭痛の治療による120例の即時止痛」
手针咽喉点治疗急性咽痛即时止痛120例
杨威 孙红 《中国针灸》 2001年05期

耳鍼の場合はとにかく瀉血ばかりです。または耳背を切る割治です。

1996年「耳輪点を刺して放血による扁桃炎100例の治療」
耳轮点刺放血治疗扁桃腺炎100例
王道奇 《中国针灸》 1996年10期

ダーウィン結節にあたる耳穴「結節」は別名「肝陽」であり、主治はめまい、頭痛、高血圧です。耳穴「輪1」は主治が扁桃炎、呼吸器感染、発熱です。耳穴「輪2」と「輪3」も同じです。耳垂には耳穴「扁桃体」もあり、主治は扁桃炎・咽頭炎です。
しかし、フランス式耳穴のTonsilとは全く位置が違います。

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