日本伝統医学の中の肝気鬱結 『これからの「脉診」の話をしよう‼』

これからの「脉診」の話をしよう‼
浦山玖蔵
たにぐち書店2018年11月

先週、参加させていただいた日本中医学会の最大の収穫は『これからの「脉診」の話をしよう‼』をたにぐち書店さんで購入したことです!

特に第6章臓腑学基礎論と、第7章「気滞」と「血オ」が素晴らしいです。第6章302ページの「後藤艮山と肝気鬱結」は中医学派も日本伝統医学派(経絡治療派)も絶対に読んだ方が良いと感じます。

中国伝統医学の古典を読んでいくと驚くのは、臓腑弁証で最も有用である「肝気鬱結(肝気鬱滞)」についての古典記述がほとんどないことです。「肝は疏泄をつかさどる」は金元時代の朱丹渓の造語であり、現代の意味とは全く異なり、明清時代の医書をいくら読んでも現代の「肝気鬱滞」に相当する概念は出てこないからです。

私個人は、肝気鬱滞証は1949年以降の中華人民共和国で秦伯未先生などがクリエイトした概念であり、「戦後の共産中国が、中国伝統医学の進歩に貢献した数少ない部分」と言っていました。

302ページからの「第3項 後藤艮山と肝気鬱結」は読んでいて腰を抜かすほど驚きました。現代中医学の肝気鬱結のルーツは江戸時代の代表的な古法派である後藤艮山や和田東郭、香川修庵らの記述にあるというのです!

確かに後藤艮山は周囲に気を遣いすぎることで起こる「肝胆の気の鬱結」が万病の原因となる「一気留滞論」を唱えています。この後藤艮山以来の肝胆の気の鬱結が湯本求真『皇漢医学』などから中国に取り入れられたのではないかと論じられています。

以下、引用。

『皇漢医学』は中国では1929年から1956年にかけて8回も再版を繰り返していたベストセラーであり、本家の伝統医学と融合する形で「肝気鬱結」という現代中医学の病理観が醸成されていったという可能性は大いにありうるのである。

この文献は、本当に素晴らしいです。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする