花粉症・アレルギー性鼻炎 シャリテ大学病院のランダム化比較試験

2013年3月11日『ニューヨークタイムズ』
「本当に?鍼は花粉症(枯れ草熱)の症状を軽減できるの?」
Really? Acupuncture Can Reduce Symptoms of Hay Fever

以下、引用。

最近、研究者のチームが大規模な臨床試験の結果を『世界五大医学雑誌アナルス・オブ・インターナル・メディスン』に発表した。422人のアレルギー性鼻炎をランダムに3つのグループに割付け、一つのグループは8週で12回の鍼治療を受けた。

8週後、これらの鍼を受けたグループの症状は他の2つのグループと比較して大きく改善していた。そして普段よりも抗ヒスタミン剤の使用量が減っていた。

シャリテ大学病院と呼ばれる病院は、西洋医学の父ロベルト・コッホや病理学の父ルドルフ・ヴィルヒョウ、パウル・エールリッヒや北里柴三郎が留学していたドイツでもっとも歴史ある病院です。本当の意味で近代西洋医学が生まれた病院です。 そのシャリテ大学病院のブリンクハウス教授が書いた2013年の論文は、世界五大医学雑誌の『アナルス・オブ・インターナル・メディスン』に発表されました。

2013年「季節性アレルギー性鼻炎の患者の鍼:ランダム化比較試験」
Acupuncture in patients with seasonal allergic rhinitis: a randomized trial.
Brinkhaus B et al.
Ann Intern Med. 2013 Feb 19;158(4):225-34. doi: 10.7326/0003-4819-158-4-201302190-00002.

ブリンクハウス教授は2014年に『ドイツ鍼雑誌(DZA:Deutsche Zeitschrift für Akupunktur)』に「アレルギー性鼻炎患者への鍼:『証』によって分類した介入の分析研究」を発表しました。

これはドイツの6つの大学診療所と32のプライベートクリニックでの422人の季節性アレルギー性鼻炎のランダム化比較試験の患者を証で分析したところ、風寒と風熱と肺気虚を兼ねるものが37%で、合谷、曲池、迎香、印堂、風池、太衝、足三里、列欠、三陰交が最も使われていたという分析です。

2014年「アレルギー性鼻炎患者への鍼:『証』によって分類した介入の分析研究」
Akupunktur bei Patienten mit allergischer Rhinitis: Analyse der Studienintervention und Syndrommuster der randomisierten Multicenter Studie (ACUSAR)
Deutsche Zeitschrift für Akupunktur
J.Hummelsbergerb .Brinkhaus et al.
Deutsche Zeitschrift für Akupunktur Volume 57, Issue 3, 2014, Pages 6-11

ブリンクハウス教授の2015年論文
「季節性アレルギー性鼻炎の自律神経機能と鍼:ランダム化比較試験による実験的パイロット研究」
Autonomic Function in Seasonal Allergic Rhinitis and Acupuncture – an Experimental Pilot Study within a Randomized Trial.
Ortiz M, Brinkhaus B et al.Forsch Komplementmed. 2015;22(2):85-92.

ブリンクハウス教授の2018年論文
「季節性アレルギー性鼻炎患者における抗ヒスタミン剤使用へのインパクト:ランダム化比較試験の結果の2次分析」
Impact of acupuncture on antihistamine use in patients suffering seasonal allergic rhinitis: secondary analysis of results from a randomised controlled trial.
Adam D, Brinkhaus B et al.
Acupunct Med. 2018 Jun;36(3):139-145. doi: 10.1136/acupmed-2017-011382. Epub 2018 Feb 10.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6029641/

『アレルギー性鼻炎の臨床ガイドライン』は強く抗ヒスタミン剤を推奨しているが、鍼も非薬物療法に興味を持つ患者の選択枝の代替補完手段としてリストアップされている(2015年『AAO-HNSF臨床ガイドライン・アレルギー性鼻炎』)。その結果は臨床ガイドラインにおける鍼の選択枝の必要性を考慮するさいに勇気付けられるものである。ただ、経済的観点から鍼は季節性アレルギー性鼻炎のコスト・エフェクティブな治療とはいえないようである。

2015年2月にアメリカ耳鼻科および頭頸部外科アカデミーからAAO-HNSF臨床ガイドライン・アレルギー性鼻炎が出版され、「(5)臨床医は非薬物療法に興味をもっているアレルギー性鼻炎患者に鍼を提案したり、鍼のできる臨床医を紹介する」と鍼が推奨されていました。

ドイツ・シャリテ大学病院のブリンクハウス教授による季節性アレルギー性鼻炎のランダム化比較試験は、季節性アレルギー性鼻炎の鍼の科学的研究を語る際には必須の基礎知識となります。

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