普通感冒

2016年「『カゼ症候群』の中医診療ガイドライン」
普通感冒中医诊疗指南(2015版)
李建生 余学庆
《中医杂志》 2016年08期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-ZZYZ201608023.htm
http://cmrd.hactcm.edu.cn/_medi…/…/2018/05/09/2npt05q4uc.pdf
(オープンアクセスPDFファイルあり)

中国では現在、中医の診療ガイドラインが次々と出版されています。「かぜ症候群の中医診療ガイドライン」には鍼灸も入っていますが風池、大椎、列欠、合谷、外関が主穴です。風寒なら風門(BL12)と肺兪(BL13)を加え、風熱なら曲池(LI11)と尺沢(LU5)を加え、暑湿なら中脘(CV12)と足三里(ST36)を加えます。

中国の中医ガイドラインは、中薬は結構細かく書いてあるのですが、鍼灸の扱いは本当に雑です。

最近、急性期のカゼは家族ぐらいしか治療しませんが、基本、気持ちの良い按摩マッサージ指圧で関節痛などの症状を緩和して寝てもらうのが基本です。結局、急性期の軽症のかぜなんて寝ていたら治ります。野口晴哉先生の「風邪の効用」で季節ごとに軽症の風邪をひいてからだをリセットしたほうが良いんじゃないかとまで思っています。

中国の論文を調べて参考になったのは、感冒をひいて治りきらない咳などの不調がけっこう書いてあったことです。日本の鍼灸の臨床でもかぜが治りきらない不調の方が現実的だと思います。

2016年「最近30年の感冒後の咳嗽の針灸治療の文献計量学による分析」
近30年针灸治疗感冒后咳嗽的文献计量学分析
张俊茶 邢亚情 刘君 潘丽佳 张晓琪 杜潇怡 范玺胜 佘延芬
《河北中医药学报》 2016年03期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-HZYX201603022.htm
※结论:针灸治疗感冒后咳嗽多采用膀胱经腧穴,主要方法为针刺和拔罐,有效率较高

今回、もっとも勉強になったのは、承淡安先生に学んだ江蘇省の名鍼灸医・盛灿若先生による感冒後の声のカスレへの咽四穴の針刺と揪痧療法を知ることができたことです。揪痧療法は刮痧の一種です。「咽四穴」は角度が独特です。

2018年「咽四穴への針刺と揪痧法による感冒後の声のカスレ16例への治療」
针刺“咽四穴”为主加揪痧法治疗感冒后声音嘶哑16例
闫慧新 于建 孙建华 盛艳 徐天成 盛灿若
《中国针灸》 2018年02期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-ZGZE201802029.htm

急性期の風邪の鍼灸治療に関し、以下の研究はユニークでした。

2015年「曲池(LI11)・合谷(LI4)への針刺による外感発熱(風熱証)の治療の臨床観察」
针刺曲池合谷穴治疗外感发热(风热证)的临床观察
张林 《湖南中医药大学》 2015年
http://cdmd.cnki.com.cn/Article/CDMD-10541-1015563409.htm

結論:(1)曲池(LI11)・合谷(LI4)の外感発熱風熱証への針刺は、即時と短期の解熱効果において漢方よりも優れていた。

2014年「感冒の針灸治療の選穴法則の現代文献研究」
针灸治疗感冒选穴规律现代文献研究
戢杨 《针灸临床杂志》 2014年11期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-ZJLC201411027.htm

※使用频次较高的腧穴依次为大椎(27)、足三里(19)、合谷(13)、风门(9)

基本的に大椎(GV14)がいちばん多いのは納得です。以下の大椎に単独で灸するというのは日本式でスタンダードだと思います。

1996年「大椎(GV14)穴単独施灸による風寒感冒32例の治療」
独灸大椎穴治疗风寒感冒32例
刘佩云 王惠香
《山东中医杂志》 1996年05期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-SDZY605.018.htm

1997年「大椎(GV14)への生姜泥熱敷による感冒の治療」
生姜泥热敷大椎治疗感冒
江志华 江秋世
《吉林中医药》 1997年05期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-ZYJL705.021.htm

中国の新聞メディアによく載っているのは、大椎のマッサージによるカゼの予防です。

2019年「大椎(GV14)穴への按法・揉法による感冒の予防」
按揉大椎穴防感冒
王荣华
《开卷有益-求医问药》 2019年05期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-KJQY201905039.htm

大椎への刺絡や鍼の瀉法ですが、やはり脈診や舌診で風寒と風熱を厳密に区別しているのでしょうか。日本は湿化熱が多いからあまり厳密に区別しなくても良い印象があります。

2016年「大椎(GV14)穴への感冒発熱への刺血抜罐治療の治療効果の観察」
大椎穴位刺血拔罐治疗风热感冒发热疗效观察
方成华 段亚平 曾贤 徐云燕 徐静薇
《亚太传统医药》 2016年07期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-YTCT201607057.htm

2006年「大椎(GV14)穴への針刺治療による感冒高熱の臨床観察」
针刺大椎治疗感冒高热临床观察
邓玲 赵建国
《中国针灸》 2006年08期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-ZGZE200608005.htm

2007年「感冒高熱への大椎(GV14)への針刺による解熱効果の臨床観察」
针刺大椎对感冒高热退热效果的临床观察
肖蕾 蒋戈利 赵建国 王立新 邢军 李坚将 杨政霞
《中国针灸》 2007年03期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-ZGZE200703003.htm

以下は英語でプロトコルだけが事前に発表・登録されていて、まだ結果が発表されていない「かぜ症候群の鍼:システマティックレビューとメタアナリシスのプロトコル」です。おそらく1年から2年後には中国発の鍼のシステマティックレビューが英語で大量に発表される予定です。

2018年3月「かぜ症候群の鍼:システマティックレビューとメタアナリシスのプロトコル」
Acupuncture for common cold: A systematic review and meta-analyze protocol.
Cheng Y et al.
Medicine (Baltimore). 2018 Mar;97(10):
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31099220
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5882456/

中国では2年以内に50本ほどの鍼灸が含まれる「中西医結合診療ガイドライン」が発表される予定です。そして、2~3年後に大量の英語の鍼灸EBMシステマティックレビューが発表されます。2020年代の鍼灸のEBMの世界で起こると予測される大変化になんとかついていきたいと思います。

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