腰痛とドイツからの中医学弁証論治鍼灸への問いかけ

2013年10月28日発表
「慢性腰痛への標準鍼灸VS弁証論治の鍼灸:ランダム化比較試験」
Standardized versus Individualized Acupuncture for Chronic Low Back Pain: A Randomized Controlled Trial
Claudia M. Witt et al.
Evid Based Complement Alternat Med. 2013; 2013: 125937.
Published online 2013 Oct 28
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3830844/


2000年代、ドイツではクラウディア・ウィット先生という女性医師が指揮をとり、ドイツ鍼大規模臨床試験(GERAC GERman ACupuncture Trials, 2002–2007)で数千人単位の大規模臨床試験を行い、その結果を受けてドイツでは腰痛や膝痛などの痛みに対して保険が支払われるようになりました。そのクラウディア・ウィット先生の刺激的な研究です。

150人の外来の慢性腰痛患者を2グループにランダムに割付け、78人の標準鍼グループ、72人の弁証論治の鍼グループに分けて効果を比較しました。標準鍼は15年以上の臨床経験のある中医師が決めた腎兪(BL23)、気海兪(BL24)、大腸兪(BL25)と委中(BL40)、崑崙(BL60)、陽陵泉(GB34)、太溪(KI3)の配穴。弁証論治された鍼は脈診・舌診をして(標準鍼もプラセボを防ぐために舌診・脈診を行う)、各治療前の証の診断に基づき治療しました。比較するために14本の鍼が使用されるようになっていました。ベルリンで患者を募集し、西洋医学20年、東洋医学15年以上の臨床経験をもつ中国人の鍼師が週に2回の鍼治療を行いました。

以下、引用。

この研究は慢性腰痛に対する鍼治療の効果を見たものではない。既にブライアン・バーマンが慢性腰痛について偽鍼よりも真鍼のほうが少しであるけど優れていることを示している。

※メリーランド医科大学のバーマンの腰痛の論文は2010年に『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』に発表されました。
Acupuncture for chronic low back pain. The New England Journal of Medicine. 2010;363(5):454–461)

われわれの研究では慢性腰痛の標準鍼治療と弁証論治された鍼治療の間に統計的に有意な差をみいだすことはできなかった。

結論として、慢性腰痛の弁証論治の鍼は標準化した鍼治療よりも優れていなかった。

これは西洋医学の視点から見れば歴史的研究だと思います。つまり、西洋の鍼研究は「鍼は効くのか?」というレベルの研究から「どのような鍼治療が効くのか?」「中国の弁証論治鍼灸は本当に効果があるのか?」という段階に入っています。

現代中国の中医大学の弁証論治から言えば、このドイツ・ベルリンのランダム化比較試験の結果は「そういう結果が出るだろうな」と納得しています。

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