慢性疼痛の日本市場

以下、引用。

20歳以上の日本人の4.4人に1人が抱えていると言われる「慢性的な痛み」。治療薬の市場も拡大しており、民間会社・富士経済の予測によると、慢性疼痛治療薬の市場は2024年に現在の1.6倍に拡大するといいます。

市場拡大を牽引しているのは神経障害性疼痛治療薬「リリカ」で、オピオイドや抗うつ薬の使用も広がっています。今後も新製品の登場が見込まれており、慢性疼痛治療薬市場は一層、活気づいていきそうです。痛みとひと口に言っても、原因や症状はさまざま。上の調査によれば、腰痛が55.7%で最も多く、四十肩・五十肩・肩こりが27.9%、頭痛・片頭痛が20.7%と続きました。

多くの患者がいるだけに治療薬の市場も動きが活発です。民間調査会社の富士経済が16年11月に発表したレポートによると、16年の慢性疼痛治療薬市場は、前年比9.6%増の1273億円になる見込み。24年には15年比61.7%増の1877億円まで拡大すると予測されています。

【市場拡大、牽引役は「リリカ」 オピオイドも売上増加】

痛みの治療といえば「ロキソニン」「ボルタレン」「モーラス」などが定番ですが、慢性疼痛治療薬市場の拡大を支えているのは、こうした非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)ではありません。

市場を牽引しているのはファイザーの「リリカ」。神経の過剰な興奮を抑え、神経伝達物質の放出を抑制することにより、神経が障害されることで起こる痛みを緩和する医薬品です。2010年に帯状疱疹後神経痛を対象に発売され、現在は帯状疱疹後神経痛を含む「神経障害性疼痛」と「繊維筋痛症に伴う疼痛」の適応で承認されています。

リリカは発売直後から急激に売り上げを伸ばしており、15年度の売上高は前年度比13.9%増の877億6300万円(薬価ベース、IMSジャパン調べ)に達しました。

オピオイドの使用も広がっています。オピオイドは従来、主にがん性疼痛の緩和に使われてきましたが、11年以降、がん性疼痛以外の慢性疼痛の適応を持った製品が相次いで登場し、処方を増やしています。

11年7月に非がん性慢性疼痛の適応で発売された持田製薬(製造販売元はヤンセンファーマ)の「トラムセット」(非麻薬性合成オピオイド・トラマドールと解熱鎮痛薬アセトアミノフェンの配合剤)は、16年度の売上高が101億円に達する見通し。日本新薬の「トラマール」(トラマドール)も、13年6月に慢性疼痛への適応拡大が承認されて以降、売り上げ拡大に加速がつき、16年度は前年度比60%増となる69億円(徐放製剤「ワントラム」を含む)の売り上げを予想しています。

鎮痛効果の強い「強オピオイド」に分類される「デュロテップMT」「ワンデュロ」(いずれもヤンセンファーマ)や「フェントステープ」(久光製薬)も、10年から14年にかけて慢性疼痛への適応拡大が承認。今年11月には、塩野義製薬が「オキシコンチン」の適応拡大を申請しました。

オピオイドは中枢神経に作用して痛みを緩和するもので、高い効果が期待できる一方、依存性もあり、米国では乱用が社会問題となっています。

抗うつ薬の「サインバルタ」(塩野義製薬・日本イーライリリー)も、12年に「糖尿病性神経障害に伴う疼痛」、15年に「線維筋痛症に伴う疼痛」、16年に「慢性腰痛症に伴う疼痛」の適応拡大が承認されました。富士経済のレポートによると、適応拡大によって慢性疼痛治療薬としての処方が増える見通しで、今後の市場拡大を支えるとみられています。

『コクランシステマティックレビュー』日本語版
「非特異的腰痛に対する抗うつ薬」

以下、引用。

著者の結論:
慢性腰痛患者の管理において、抗うつ薬がプラセボよりも有効であることを示す明確なエビデンスはない。

成人の2割以上が抱えている慢性の痛みにおいて治療薬の幅も広がっています。パイプラインも含め、拡大する市場を俯瞰しました。

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