耳穴の標準化にとらわれずにデータを正確に読む

2019年5月13日
「非侵襲的イヤー・クリップによる神経刺激は心房細動を抑制する」
Noninvasive Ear-Clip Nerve Stimulation Suppresses Atrial Fibrillation


(引用元:Noninvasive Ear-Clip Nerve Stimulation Suppresses Atrial Fibrillation

この耳を挟んでいるクリップは副交感神経刺激デバイスとしてアメリカFDAの認可も受けたそうです。2019年のアメリカ心臓リズム学会の第40回サイエンティフィック・セッションでランダム化比較試験の結果が報告されました。

耳珠への刺激はfMRIを使った研究で迷走神経の耳介枝を刺激することが判明しています。


2017年12月「耳珠を刺激した経皮的耳介迷走神経刺激と神経生理学効果:経皮的耳介神経刺激とfMRI研究レビュー」
Neurophysiologic effects of transcutaneous auricular vagus nerve stimulation (taVNS) via electrical stimulation of the tragus: A concurrent taVNS/fMRI study and review
Bashar W. Badran,
Brain Stimul. 2018 May-Jun; 11(3): 492–500.
Published online 2017 Dec 29
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29361441
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6487660/

中国式耳穴では、耳珠の外側に外耳、外鼻、屏尖、腎上腺 、上屏、下屏、屏間前という7つの耳穴があり、耳珠の内側のクリップが当たるところに咽喉、内鼻の2穴の耳穴がありますが、一つとして心臓と関係しないので、中医学の耳穴理論では現実を説明できないのが現状です。

中医学の弁証論治に基づく耳穴理論ではダース・ピアッシングという耳穴「食道」や「小腸」あたりの刺激で片頭痛が治ることを説明できません。耳甲介舟(シンバ・コンチャ)の刺激で関節リウマチ、疼痛、炎症が改善することも説明できません。耳珠の刺激で心房細動を減らすことも説明できません。

西洋医学の生体電子工学医学側は耳介刺激の効果を否定しているのではなく、むしろ「耳介刺激はこんなに効果がある」と述べているのに対して、中医師が現状では何も説明できません。「耳穴の標準化」という政治的立場からこれらの現実を認められないからです。世界には中国の弁証論治の耳穴理論が広まり、一帯一路でさらに普及する予定です。政府保証がついた中国式耳穴弁証論治理論はしばらくは安泰かもしれませんが、理論が近い将来に破綻する可能性が高いと予測でき、これは重要な問題です。

それでも、耳穴の症例が1番集積されているのは中国のデータベースです。宝の山であるこの資産を上手く使うには、中国式耳穴の知識が必要になります。慎重に吟味して耳介鍼をアップデートしていけば、時代の中で相対的に優れた技術をつくることができるかも知れません。

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