片頭痛と中医体質

「片頭痛患者の中医体質の特性の研究」
偏头痛患者的中医体质特征研究
黎婉玲
《南方医科大学》 2012年
http://cdmd.cnki.com.cn/Article/CDMD-90023-1013123970.htm


北京中医薬大学の王琦先生による体質分類を片頭痛患者270例に応用しました。

「正常体質」
「気虚型」
「陽虚型」
「陰虚型」
「痰湿型」
「湿熱型」
「血瘀型」
「気欝型」

結論として血瘀型、気欝型が片頭痛患者の体質と関連があるという妥当な結論です。

ここで考えたいのは「体質」です。片頭痛は遺伝性があり、西洋医学的にも体質と関連があると言えると思います。中医学でも、「血瘀型」、「気欝型」と片頭痛に関連があるという結論は妥当であり、多くの臨床家も同意すると思います。自分の実感としては、片頭痛に対して鍼は強い鎮痛作用があり、最も効果があります。また、気鬱や瘀血の治療と併用すると効果的というのも実感しています。

しかし、血瘀体質、気欝体質が鍼灸でどこまで改善できるのかは疑問があります。例えば、血瘀体質では顔にシミやソバカスが出やすいですが、鍼で生理痛の痛みという主訴がましになっても顔のシミやソバカスはそのままです。生理前にイライラする気鬱体質の方は、鍼で月経前症候群の症状という主訴はましになりますが、次の月にはやはり他の人と比較して相対的にはイライラしやすい傾向は否めないと思います。

顔色が相対的に青白い肝血虚がベースにある患者さんは、長期的に治療してめまいなどの主訴・症状がましになって血色は良くなっても、顔色のベースにある青色は変わらないと思います。

片頭痛の体質も同じだと思います。これは『傷寒論』の張仲景先生と同時代の華佗の片頭痛治療を読んでも同じことを感じます。正史『三国志』を読んでも、魏の曹操の片頭痛を鎮痛できるのは華佗の鍼だけでしたが、華佗が曹操の治療を嫌がり退官し、怒った曹操が華佗を処刑し、処刑後に曹操の片頭痛は鎮痛できなくなった歴史が記録されています。華佗は鍼だけでなく湯液も使っていました。華佗は曹操の片頭痛を鎮痛できましたが「片頭痛を起こす体質」は治せなかったわけです。これは片頭痛の治療戦略のエンドポイントを設定するのに重要な視点だと考えています。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする