ファッシャの新展開:姿勢と性格と八脈交会穴

2019年8月27日ローマ、ラ・サピエンツァ大学 ビアンコ先生
「筋膜ニューロモデュレーション:鍼・ファッシャ学・オステオパシーと神経科学で勃興しつつある概念」
Fascial neuromodulation: an emerging concept linking acupuncture, fasciology, osteopathy and neuroscience
Gianluca Bianco
Eur J Transl Myol. 2019 Aug 2; 29(3): 8331.
Published online 2019 Aug 27.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31579478
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6767840/


これは、面白いです!イタリア・パドヴァ大学解剖学教室のカーラ・ステッコ先生というファッシャ(膜・筋膜)の女性研究者の「ファッシャル・モデュレーション」の姿勢理論を鍼灸に応用しようというものです。


カーラ・ステッコCarla Stecco (著),
筋膜系の機能解剖アトラス』 医歯薬出版 (2018/2/20)

以下、2019年の論文より引用。

また、いわゆる帯脈は先祖からの筋肉の運動があり、 陰きょう脈や陽きょう脈が足の筋肉の内転・外転(注:日本の足関節の外反や内反の意味)をコントロールするように足の横の筋肉の緊張の解放に使われる。

これが私の提案である。ステッコの描いた姿勢シークエンスとの間にオーバーラップがあり、anteropulsion と督脈、retropulsion と任脈、mediopulsionと陰維脈、lateropulsion と陽維脈、intrarotation と陰きょう脈、extrarotation と陽きょう脈、衝脈と帯脈は深層筋と脊柱に関連がある。

いかにして奇経を使うのか。中医学理論によれば、奇経八脈は4つの陰極と4つの陽極で特徴づけられ、すべての経脈に開かれている八総穴がある。

もちろんクラシフィケーションが3つの異なるタイプに提案されており、理解を助けるだろう。いわゆるマゾヒスト性格は筋肉シークエンスでは次のような陰経をペアで用いる。「照海(KI6)ー列欠(LU7)」「公孫(SP4)ー内関(PC6)」は同時にanteropulsion、mediopulsion、そしてintrarotationに働く。

ナルシスト性格では陽経の「申脈(BL62)ー後渓」「足臨泣(GB41)ー外関(TE5)」を組み合わせる。

論文を読んでビックリしました。これから奇経八脈の八総穴を使う際にマゾヒスト性格やナルシスト性格というキーワードが浮かびそうです。しかし、経絡と動作を分析したものには向野義人先生の「経絡テスト」があります。また、奇経と動作や性格を分析したものには、戸ヶ崎正男先生が、野口晴哉の『体癖』上下型・左右型・前後型・捻転型などをベースに督脈任脈を調整するという治療法「任督中心療法」を開発されています。上下型は第1腰椎、左右型は第2腰椎、捩れ型(捻転型)は第3腰椎、前後型は第5腰椎を調整します。この 『体癖』の分析は、ものすごく鋭いと感じています。

※「体量配分移動測定による無意動作の研究」
柳田 利昭『体育学研究』1963 年 7 巻 1 号 p. 186-
https://www.jstage.jst.go.jp/…/7_KJ00003393491/_pdf/-char/ja

【上下型】

一種・二種:「一種体癖はすぐに上がってしまう質の人です」「考えることがあっても行動しない」「余剰エネルギーが大脳昇華する」「頭の緊張がすぐに体に現れて直接胃袋が痛くなったり下痢をするのを二種体癖としました」
>野口晴哉『整体入門

「首が太くなってくる」「首が真っ直ぐにのびているので首が太く長くなる」「過敏反応部位は一種傾向の人は頚椎筋に現れるのに対して二種傾向の人は胸鎖乳突筋に現れやすい」「大体上下的な傾向の人はみんな上に上がる傾向がある。踵がつかないで背伸びして歩く。したがって行動の焦点は腰椎の1番に偏する」
>野口晴哉『体癖』115ページ

【左右型】

三種・四種:「エネルギーが余ると食べたくなる体癖は体の運動でいえば左右型」「たくさん食べすぎると右肩が下がり、お腹が空くと左肩が上がる。左右類型の人の感受性の特徴はいつも好きとか嫌いとかいう感情が行動の基本になっています」「感情が行動の基本になるものを三種体癖、感情が直接体に影響するものを四種体癖としました」
>野口晴哉『整体入門

「どんな体の使い方をしていても、左右いずれかに力を偏らせているから、履物の減り方でも着物の崩れ方でも、歩き方でも特徴があります。」「三種、四種の人は胃袋または心臓に変化を起こしやすい」「立って働いていても腰椎二番の硬直度がある一定の状態に至
ると疲労感を感じて、それからは働き続けられない」
>野口晴哉『体癖

【捻転型】

七種、八種:「歩く時にはお尻を振って調整する」「自分が考えている通りにならないと、ええい、面倒くさい、やっちまえということになる」「発作的にパッとやってしまう。つまり衝動的になる。あるいはやり過ぎてしまう」「エネルギーの欝滞」「捻れ型の衝動的発作は捻れが限界に達した時に起こるが、その限界は鳩尾の片側が硬くなった時である。左が胃癪なら右は肝癪です」「そういう人の場合に腰椎の三番を調べれば捻れているからすぐに判ります」
>野口晴哉『体癖

【前後型】

五種、六種:「肩をいからして威張ったり、肩を落としてガッカリするというように肩で表情をつくる。運動をしないと不安で動きながら考える」「ラジオを聞きながら勉強する。レコードをかけながら勉強する、いわゆるながら族」
>野口晴哉『整体入門

「五種というのは考える前にまず行動してしまう。いや行動してしまわないと判らない。行動しないと頭が働かない」「五種の体型の特色は逆三角形であり、肩に力が入っている。何か緊張すると肩に力が入る」「五種には冒険の本能があるというが、自分の警戒の習性、心配の習性、不安の習性に対して戦いを挑んでいる」「五種は肩に力が入ると、腰椎五番の椎骨に力がかかってくる」「五種の特徴は頭の中では絶えず計算が綿密にでき、最後に弱った時でも理性がハッキリしている。それで絶えず自分の理性を対象に頑張る」「五種は呼吸器が働いて丈夫な体であることが多いが、六種は体の疲労がすぐに呼吸そのものに反映してハーハーと息切れするようになる」「スポーツの選手の大部分が五種である」
>野口晴哉『体癖

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