南京中医薬大学の張樹剣先生の研究 #2

2015年「朱蓮の『新鍼灸学』と鍼灸科学の夜明け」
朱琏“新针灸学”与针灸科学之初曦
张树剑 张立剑 《中国针灸》 2015年11期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-ZGZE201511053.htm

2014年「近現代鍼灸の科学化の実践と転換ー朱蓮を中心に」
近现代针灸科学化实践与转向——以朱琏为中心
张树剑 《中国针灸》 2014年10期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-ZGZE201410038.htm

朱)先生は江蘇省出身の女医で、 鍼灸の専門家であり延安で鍼灸治療をしていた老中医、任作田先生に学びました。毛沢東と親しく、1949年に北京に入り政治家として人民政府衛生部の役職に就きます。1951年に鍼灸療法実験所の所長となり『新鍼灸学』を出版しました。これはソ連のパブロフ学説に基づく鍼であり、のちの鍼麻酔につながっていくと一般に説明されています。朱璉先生から中国の中西医結合の鍼が始まりました。

南京中医薬大学の張樹剣先生は、まず朱璉先生と共に老中医、任作田先生に学んだ魯之俊先生の証言を調べます。鍼灸太師、魯之俊先生は1950年に『新編鍼灸学』を出版されています。

任作田先生に鍼灸を学んでいたときに、 朱璉と魯之俊先生は承淡安先生の著作を学んでいたのです。

そして、承淡安先生は日本に留学した際に日本鍼灸を学んでいました。さらに1931年には中華民国で『高等鍼灸学講義』という名前で神戸延命山鍼灸専門学院のテキストが何度も出版されていました。この日本の『高等鍼灸学講義』の中に、興奮作用・抑制作用(鎮静作用)・誘導作用など補瀉を近代日本鍼灸が解釈した理論が掲載されていました。実は、 朱璉や魯之俊の神経学説にもとづく鍼灸の用語はソ連のパブロフ以上に日本近代鍼灸に影響されていたのです。考えてみれば、ソ連のパブロフは鍼灸を知らないから当たり前です。

そして承淡安先生の香港の弟子であり、1935年に『鍼灸医学大綱』を出版した香港針灸名医、曽天治先生は、1937年の香港に科学鍼灸医学院を設立し、1944年に『科学鍼灸治療学』を出版しています。承淡安先生は日本の丸山昌郎先生の『経絡現象』を翻訳した先生であり、本質的に科学派です。

つまり、朱璉先生にはじまる鍼麻酔の中西医結合派も、承淡安先生にはじまる弁証論治派も共に日本の神経学説にもとづく日本近代鍼灸や日本伝統鍼灸をベースにして現代の中医学や中西医結合にたどりついたという奇妙な歴史を南京中医薬大学の張樹剣先生は明らかにされているのです。

張樹剣先生はさらに現代の小針刀、ドライ・ニードリング、浮鍼療法の分析もおこなっています。

2016年「針刀医学理論の回顧と伝統針灸理論の関係の初歩的探求」
针刀医学理论回顾及与传统针灸理论之关系初探
王永莉 张树剑
《中国针灸学会针灸文献专业委员会2016年学术年会针灸诊治理论研究与应用学术研讨论文汇编》2016年
http://cpfd.cnki.com.cn/Arti…/CPFDTOTAL-ZGZS201609001021.htm

2019年6月「『ドライニードリング(干针)』の中医鍼灸への侵略と独立ー針灸概念の理論の変革」
“干针”对中医针灸的“入侵”与“独立”——兼论针灸概念与理论变革
张树剑 《自然辩证法通讯》 2019年06期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-ZRBT201906011.htm

2019年9月「『浮針療法』の臨床応用と発展」
浮针疗法临床应用进展
韩兆文 崔华峰 张树剑
《广州中医药大学学报》 2019年09期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-REST201909042.htm

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