中国鍼灸の新しい潮流

2013年「阿是取穴法源流論」
阿是取穴法源流论
张树剑
《中国针灸》 2013年02期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-ZGZE201302029.htm


南京中医薬大学の張樹剣先生による阿是取穴法の概念の交通整理です。

2006年に張樹剣先生は中国中医研究院针灸研究所の趙京生先生と阿是穴に関する論文を書かれています。

2006年「阿是穴法弁」
阿是穴法辨
张树剑 赵京生
《中国针灸学会针灸文献专业委员会2006年学术年会论文汇编》2006年
http://cpfd.cnki.com.cn/Arti…/CPFDTOTAL-SOAP200611001023.htm

趙京生先生は「痛をもってと輸穴とする」と「阿是穴」を多くの人が混同していると指摘しています。これはその通りで、局所の圧痛点だけでなく離れた部分の「ああ、そこ」も阿是穴に含まれます。

2010年「『痛をもって輸穴とする』と『阿是穴』の概念の用語の弁別」
“以痛为输”与“阿是穴”:概念术语考辨
赵京生
《针刺研究》 2010年05期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-XCYJ201005012.htm

2011年に張樹剣先生は後世に腧穴は固定化してしまったが、本来は皮膚の色素沈着や陥凹や突起などの反応点であると論じています。

2011年「早期の腧穴形態の概念の説明」
早期腧穴形态观念阐微
张树剑
《中国针灸》 2011年12期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-ZGZE201112025.htm
http://www.360doc.com/co…/…/1212/18/28804235_519894441.shtml

現代中国の腧穴は、十四経の「経穴」 と「経外穴」=「奇穴」、そして「阿是穴」の3種類を含む概念です。 中国の教科書は「腧穴学」となっています。張樹剣先生の2013年論文では、阿是穴と不定穴、天応穴の概念を『勉学堂鍼灸集成』や『東医宝鑑』、多紀元簡の『霊枢識』、原南陽『経穴彙解』などの古典を根拠に整理していきます。

さらに阿是穴と激痛点トリガーポイントを比較して論じています。

以下、引用。

彭增福は西洋医学の針刺療法であるトリガーポイントと伝統鍼灸の腧穴間の比較で、解剖部位や臨床主治および鍼が引き起こす反応や感伝現象から両者は十分に似ているとしている。

筆者は黄帝内経の腧穴を調べた。早期には腧穴は実態の形態をもって発現し、気穴、骨空、渓谷、絡脈、脈動、筋結、圧痛などが早期の腧穴の形態であった。さらに臨床的発展により、われわれは皮膚突起、皮膚の陥凹、色素沈着、温度敏感区なども他の形態の腧穴とみなしている。

実際、およそ治療的意義のあるすべての腧穴には共通の特徴、つまり局所的な異常な変化がある。これは阿是穴による取穴の根拠となっており、異常な変化がみられるところが治療のゾーンである。

このような考えによれば、人体で生理的な異常のない状態であるなら治療の必要もなく、阿是穴に反応は出現してない。すなわち異常な変化がなければ臨床的意義もない。この観点から言えば、腧穴はただ病理的状態にのみ出現して、その意義があると言える。

実は、現代中国の腧穴学の腧穴とは、経穴・奇穴・阿是穴から成り立ちますから、「経穴・奇穴は動かない」という驚くべきドグマがあります。動くのは阿是穴だけです。日本の深谷灸や沢田流は「経穴は移動する」ですから、日本人鍼灸師が一番ビックリする部分です。宋代の王惟一著、『銅人鍼灸腧穴図経』の穴位は固定化して動かないというマニュアル化の弊害がいきついたものだと思います。

熱敏灸の陳日新先生も、2011年にわざわざ「熱敏穴は腧穴の過敏化状態」であるという論文を書かれています。熱敏灸の熱敏穴は病者にのみ現れる反応点なのです。

2011年『中国鍼灸』
「岐伯の帰還:腧穴の『過敏化状態』を論ずる」
岐伯归来——论腧穴“敏化状态说”
陈日新 康明非 陈明人
『中国针灸』2011, v.31;No.269(02) 134-138
http://www.cjacupuncture.com/…/WebPublica…/paperDigest.aspx…

南京中医薬大学の張樹剣先生や熱敏灸の陳日新先生の主張は、非常に日本鍼灸の立ち位置に近いです。中国中医研究院针灸研究所の趙京生先生もトリガーポイントは阿是穴であるという論文を発表されています。

2016年「トリガーポイントの歴史的起源:古典の阿是穴」
“激痛点”之始源:阿是穴(英文)
姜姗 赵京生
《World Journal of Acupuncture-Moxibustion》 2016年02期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTotal-SJJA201602003.htm
The historical source of “Trigger Points”: classical Ashi points
ShanJIANGJing-shengZHAO
World Journal of Acupuncture – Moxibustion
Volume 26, Issue 2, June 2016, Pages 11-14
https://dryneedlingatlanta.org/…/The-Historic-Source-of-Tri…

中国中医研究院针灸研究所の趙京生先生や南京中医薬大学の張樹剣先生、熱敏灸の陳日新先生から中国鍼灸は復活する可能性があると思います。

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