うつ病と鍼とK式鍼灸スコア

 
2021年2月10日『メディカルトリビューン』
「鍼でうつ病は治療可能か-独自開発の評価スコアで検証」
https://medical-tribune.co.jp/news/2021/0210535168/
 
 
K式鍼灸スコアは以下です。 鍼灸によるうつ病治療を研究している先生にとっては研究の価値があると思います。古傷治療の考え方です。現在、「うつ病の原因として炎症がある」という学説が強くなっています。圧痛や反応を点数化するのは鍼灸の臨床とよく合っていると思います。
 
 
(01)頭部オ血スコア:百会(GV20)や尾てい骨の反応
(02)腹部オ血スコア:左大巨(ST27)や腹部手術痕
(03)気の病スコア:ダン中(CV17)や心兪(BL15)、T5の圧痛、水分(CV9)の拍動
(04)睡眠障害スコア:巨闕(CV14)の圧痛
(05)傷跡スコア:手術痕・外傷歴
(06)副腎スコア:左右の肓兪(KI16)と左右の然谷(KI2)の圧痛
(07)糖代謝スコア:右の関門(ST22)、脊中(GV6)の圧痛。
(08)肝スコア:右の期門(LR14)、右の膈兪(BL17)~肝兪(BL18)の圧痛
(09)免疫スコア:左右の天牖(TE16)、左右の魚際(LU10)、右外陵(ST26)。
 
 
 
以下、引用。
 
神奈川県立精神医療センター/昭和大学発達障害医療研究所の中村元昭氏らは精神症状と関連する東洋医学的な身体所見を数値化した「K式鍼灸スコア」を開発。うつ病患者を対象にKSASを用いて鍼治療の有効性を検証した臨床研究の結果について、第17回日本うつ病学会(1月25〜31日、ウェブ開催)で報告した。
 
中村氏が所属する神奈川県立精神医療センターでは、2008年にストレスケア病棟の入院患者を対象に鍼灸の臨床研究を開始。精神症状との関連が想定される経穴(つぼ)への触診による圧痛を数値化したKSASを用い、うつ病患者に対する鍼灸の有効性を検討している。
 
そこで同氏は今回、同センターで実施した毫鍼による個別介入およびアルゴリズムに基づく介入研究の結果について報告した。
 
個別介入研究の対象は、同センターの入院患者69例(単極性うつ病46例、神経症性障害12例、双極性障害8例、その他3例)。5週間にわたり計10回(1週間当たり2回)鍼治療を施行し、KSAS総得点の推移などを検証した。その結果、KSAS総得点は刺鍼前(31.5±12.0点→24.0±9.5点)、抜鍼後(7.9±5.8→5.1±4.4点)ともに有意に低下した(順にP<0.001、P=0.001)。また、抑うつ、不安、怒りを表す各評価スコアも計10回の施術後に有意な改善が認められた。
 
さらに同氏らは身体所見ごとにKSASに基づくカットオフ値を設定した鍼の治療アルゴリズムを開発。入院患者162例(単極性うつ病83例、双極性障害33例、神経症性障害32例、その他10例)に対し治療アルゴリズムによる介入の有効性を検討したところ、KSAS総得点は個別介入と同様、刺鍼前(27.8±10.5点→23.2±11.0点)、抜鍼後(13.7±7.6→9.7±6.6点)ともに有意に低下した(いずれもP<0.001)。また、抑うつ、不安、怒りに加え、自律神経を評価するTOHO medical index(TMI)の有意な改善も見られた。
 
以上の結果について、同氏は「対照群を設定しない非盲検試験であるためプラセボ効果が含まれている可能性もある」としつつも「鍼治療による介入が気分障害の治療に役立つ可能性がある」と指摘。鍼灸を末梢神経を介して求心性に中枢神経系の活動を修飾し、気分障害を治療するボトムアップ・ニューロモデュレーションと位置付け、「臨床導入に向けた取り組みが重要である」とまとめた。
 
 
 
神奈川県立精神医療センターには2007年にストレスケア病棟が新設され、鍼灸が取り入れられました。
 
 
2008年
「鍼による血行改善に期待 神奈川県立精神医療センター芹香病院ストレスケア病棟に鍼灸研究室がオープン(神奈川県立精神医療センター 岩成秀夫所長・神奈川県立精神医療センターストレスケア病棟 中村元昭医長)」
『医道の日本』 67(5): 135-139, 2008.
 
 
2009年5月にK式鍼灸スコアが完成します。
 
2012年
「K式鍼灸スコア(KSAS)の信頼性検定と相関分析-うつ病など精神疾患に対する鍼灸治療の試み-」
K-style Acupuncture Score (KSAS); its reliability and clinical correlation. Japanese Journal of Clinical Psychiatry
中村元昭
『臨床精神医学』 41(3): 323-332, 2012
 
 
2012年
「精神科医療における鍼灸の可能性」
中村元昭et al.
『医道の日本』 71(9): 127-135, 2012
 
 
2015年
「神奈川県立精神医療センター・中村元昭氏に聞いた ボトムアップ・ニューロモデュレーションと鍼灸による精神疾患の研究」
『医道の日本』 74(9): 27-31, 2015.
 
 
2015年
Clinical Application of the K-Style Acupuncture Score (KSAS): Towards the Establishment of a Novel Rating Scale for Depression in Acupuncture Medicine
Motoaki Nakamura
Neuropsychiatry (2015) Volume 5, Issue 1
 
 
2015年
「鍼灸によるうつ病治療 : ボトムアップ・ニューロモデュレーション」
中村元昭
『精神科治療学』 30(5), 619-623, 2015-05
 
 
2016年
「K式鍼灸スコアを用いた精神症状の治療研究と臨床への応用」
伊東新
『医道の日本』 75(10), 91-96, 2016-10
 
 
2018年
「腹部瘀血反応圧痛点とその他病態反応圧痛点との関連 : K式鍼灸スコア(KSAS)を用いた検討」
『東洋療法学校協会誌』 (42), 110-112, 2018-10-05
 
 
 

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