経絡治療と中医学の診断システム

 
2020年11月18日
「ものごとの本質を掘り下げる:東アジア伝統医学の中国と日本における診断パターンのエッセイ」
Digging to the heart of things – An essay on patterns of diagnosis in traditional East Asian medicine: Comparing Chinese and Japanese systems
Stephen Birch
Integr Med Res. 2021 Jun; 10(2): 100695.
Published online 2020 Nov 18.
 
 
以下、引用。
 
なぜ経絡治療には心臓の病証が存在しないのか。1930年代の研究グループは霊枢の71に心臓は病まない。なぜなら神が去れば死ぬからだという記述に遭遇した。本当に経絡治療には心臓の病証は存在しないのか。経絡治療には心臓の病証はないが、話はこれで終わらない。幾人かの経絡治療臨床家は、非常にまれだが心臓病証がおこることを表明している(柳下との個人的コミュニケーション2003年など)。心臓病証はめったにないが、深刻な急性循環器疾患や統合失調症などの精神病の症状である。日本の鍼灸ではめったに重篤な症状は来ない。経絡治療30年の実践のなかで、わたしは急性精神病と急性循環器疾患の2つしか心臓病証と診断しなかった。
 
 
 
さらにスティーブン・バーチ先生は東洋はりでのアンケート体験を書かれています。一方で中国でも明代の李時珍が「脳は元神の腑」という西洋医学由来の概念を導入し、脳と神ということが言われるようになりました。
 
以下、引用。
 
ICD11の中医学の診断は混乱し、批判されている。中医学の領域では、中国以外での標準の欠如のため国際標準として未成熟である。最近の文献レビューではオ血症候群の診断において、まだ決定的でないとされている。中国の教科書においても、オ血が発展途上の概念であると結論している。
結論として、歴史的・文化的理由により心と神の概念の理解と診断が日中の経絡治療システムと弁証論地システムで異なることは合理性がある。これらの例は教育・臨床・研究において重要な議題であり、より深い研究が求められていることを示している。研究者はこの領域において誤った仮定をしないために差異を認識すべきであろう。
 
 
これは中国の中医学研究者も日本の伝統医学プラクティショナーも、ともに認識すべき領域だと思われます。未熟な初学者ほど安易で偏った結論にとびつきます。オ血ひとつとっても、まったく未熟な概念なのです。
 
 

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