殺虫剤と消毒エタノールとヨウ素製剤と精液の質

【衛生学の最前線:『ランセット』論文:殺虫剤と消毒エタノールとヨウ素製剤(ヒビスコールやイソジン)と精液の質】
2020年1月8日『メディカルトリビューン』
『父親の殺虫剤への曝露が児の男女比に影響』

以下、引用。

兵庫医科大学公衆衛生学主任教授の島正之氏らは、同調査のデータを用いて、父親の職業上の化学物質への曝露と出生児の性比との関連を解析。その結果、父親がパートナーの妊娠前に仕事で週1回以上、殺虫剤を使用していると、出生児全体に占める男児の割合が低くなることが分かったと、Lancet Planet Health(2019; 3: e529-e538)に発表した。

父親が就業中に曝露した化学物質の種類および頻度と、出生児の性比との関連を疫学的に検討した。化学物質への曝露に関しては、殺虫剤、医療用消毒薬、水銀、放射線など23種類について、パートナーの妊娠が判明するまでの約3カ月間に、父親が仕事で半日以上使用した頻度を回答してもらった。

【影響ある化学物質は殺虫剤と医療用消毒薬】

殺虫剤の使用頻度の上昇に伴い、男児の出生割合が有意に低くなった(傾向性P=0.012)。医療用消毒薬については、非使用の父親のパートナーから生まれた児(4万3,214例)のうち、男児の割合は51.1%だったのに対し、週1回以上使用する父親の児(2,428例)では48.9%と、男児の出生割合が低い傾向が示された。

今回の研究では、パートナーの妊娠前に父親が仕事で殺虫剤や医療用消毒薬を使用すると、男児が生まれる割合が低くなり、その傾向は殺虫剤の使用者でより顕著であることが示された。

Paternal occupational exposure to chemicals and secondary sex ratio: results from the Japan Environment and Children’s Study.
Adachi
Lancet Planet Health. 2019 Dec;3(12):e529-e538. doi: 10.1016/S2542-5196(19)30239-6.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31868601
https://www.thelancet.com/…/PIIS2542-5196(19)30239…/fulltext

全文が読めますが、日本の兵庫医科大学が『ランセット』に発表した論文です。

以下、引用。

殺虫剤への曝露は精子の性染色体ダイソミーの高率などの精液のクオリティが貧弱であることと関連して報告されている。

日本の医療消毒で最も使われるのはヨウ素製剤とエタノールである。

ヨウ素製剤と男児比率および精液のクオリティの関係は不明瞭であるが、過剰なヨウ素製剤の使用は甲状腺機能障害を起こすことが知られており、チロキシン濃度は精液の質と関連が報告されている。

以下は、2012年にアメリカ小児科学会が公式声明として発表した「子どもの農薬曝露」という論文からの引用です。

複数のケース・コントロール研究と証拠が、殺虫剤には脳腫瘍と急性リンパ性白血病の危険性があることを支持している。

アメリカでのコホート研究によれば、出生早期に有機リン酸エステル農薬にさらされることはIQ知能指数の減少と注意欠陥や多動障害や自閉症などの異常行動と関連している。

これがアメリカ小児学会が2012年に発表した公式声明です。

「子どもの農薬の曝露」
『アメリカ小児学会』
Pesticide Exposure in Children PEDIATRICS Vol. 130 No. 6 December 1, 2012 pp.

殺虫剤、ピレスロイドはミセスロイド、キンチョール、フマキラー、ダニアースなどの家庭用殺虫剤の中にも含まれています。

2017年7月27日ニューサイエンティスト
「精子数は裕福な国で、0パーセント近く減少した」
Sperm count has fallen by nearly 60 per cent in richer countries

以下、引用。

男性不妊の研究は裕福な国で生きている男性ほど急激な精子数の減少を示していることを示唆している。

185の異なる研究から蓄積したデータのレビューにより、1973年から2011年の北米、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドで精子数は59.3パーセントも低下したことが発見された。

この先進国での精子の激減の原因について、農薬・殺虫剤が最も有力で、私は3年ほど調査し続けています。鍼灸師は不妊治療に関わることも多く、エタノールとヒビスコール(ヨウ素製剤)も消毒で多く使用する以上、プロフェッショナルとして今回の『ランセット』論文の内容は把握すべきだと感じました。

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