男性不妊症、精索静脈瘤の弁証論治

2009年 イスラエル  シモン・シターマン先生
「陰嚢皮膚温度低下患者の初期精液の低レベルアウトプットの鍼治療による成功」
Success of acupuncture treatment in patients with initially low sperm output is associated with a decrease in scrotal skin temperature.
Siterman S,et al.
Asian J Androl. 2009 Mar;11(2):200-8. doi: 10.1038/aja.2008.4. Epub 2009 Jan 5.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19122677
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3735027/

男性不妊症を研究されてきたイスラエルのシモン・シターマン先生の意見では、鍼は陰嚢の温度が体温より高いタイプの男性不妊症には効果があり、陰嚢の温度が正常な男性不妊症(FSH高値)はあまり鍼の効果が出ないようです。陰嚢の皮膚温が低下した場合は、精液の濃度の増加が見られました。

以下、引用。

精索静脈瘤の患者では、精子数について活性酸素種(ROS)を介したダメージがあるため、鍼は過酸化プロセスを阻害し、精液アウトプットを改善すると予測された。事実、鍼治療は8人中2人の精索静脈瘤の患者に有用であった。精索静脈瘤の症例に治療が効いたかどうかは治療前、治療後のROSの測定によって適応を確認する。

精索静脈瘤は男性不妊症の原因の1つです。

以下、引用。

中国伝統鍼灸の弁証論治によれば、腎虚(=ホルモン・アンバランス)と湿熱証(生殖器の炎症)が重要なポイントとみなされている。

ツボは三陰交(SP6)、関元(CV4=Ren4)、列欠(LU7)、照海(KI6)、気衝(ST30)を両方の症候(腎虚と湿熱)に用いた。

腎陽虚(精液形成不全)には太溪(KI3)と腎兪(BL23)、横骨(KI11)、志室(BL52)が用いられた。

生殖器の湿熱証(生殖器の炎症)には陰陵泉(SP9)、蠡溝(LR5)、曲池(LI11)、水道(ST28)、足臨泣(GB41)が用いられた。

次の鍼のツボは中国伝統鍼灸に従い、腎陽虚や湿熱証ではないものに使われた。合谷(LI4)、足三里(ST36)、血海(SP10)、神門(HT7)、脾兪(BL20)、内関(PC6)、会陰(CV1)、曲骨(CV2)、気海(CV6)、命門(GV4)、百会(GV20)、風池(GB20)、太衝(LR3)、復溜(KI7)、五枢(GB27)である。

2004年「王琦教授による男性不妊症の治療の経験の紹介」
王琦教授治疗男性不育经验介绍
孙自学 陈建设
《四川中医》 2004年01期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-SCZY200401003.htm

『中医体質学』の王琦先生は、男性不妊症は腎虚に湿熱瘀毒を挟んでいると主張されています。これは納得できます。湿熱による炎症と精索静脈の「瘀」と汚染による「毒」です。

王琦提出“肾虚夹湿热瘀毒”是现代男性不育症的主要病理机制, 认为肾虚为本, 湿热瘀毒为标:性激素低下, 纵欲过度导致的少弱精子症可归于“肾虚”;前列腺炎等生殖系统炎症及嗜食辛辣烟酒导致精子活力低下、死精子症、精液不液化可归于“湿热”;精索静脉曲张及输精管道梗阻可归于“瘀”;而性传播疾病及辐射等因素可归于“毒”。它们不仅可单独致病, 又可相互影响、相兼致病。

全身性炎症による湿熱と瘀血と毒というのは現代病の特徴だと思います。湿熱瘀毒をいかに鍼灸で治療するかは現代鍼灸のテーマになると思います。

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