腹部圧痛点の感度と特異度

 
医学書院 (2013/2/25)
 

 
 
マックバーネー点は、1889年にアメリカの外科医チャールズ・マックバーネーが発見しました。
 
 
1889年「虫垂の病気の場合の早期の手術干渉の経験」
Experience with early operative interference in cases of disease of the vermiform appendix.
McBurney CH.
New York Medical Journal 1889; December 21:676–684.
 
 
 
マックバーネー点の感度は83%!、特異度は45%になります。超音波エコーとマックバーネー点を組みわせると、感度は87%で特異度は 90%!で虫垂炎の診断の精度はかなり高くなります。
 
感度87%は、100人の虫垂炎患者のうち87人が陽性になります。特異度90%は、100人の健康人に検査して90人が陰性になります。つまり、 超音波エコーとマックバーネー点を組みわせると、低いコストと手間で検査前よりも検査後の診断の精度をあげることができます。
 
この臨床で実際に行われる複数の検査によってベイジアン更新してオッズをあげていくというのが帰納法的確率論の思考法です。現代のEBМ診察学は感度、特異度、尤度比などを入れることでアップデートされました。
 
 
同じく虫垂炎の圧痛点であるロブジング徴候は、デンマークの外科医ニールス・ロブジングが1907年に発見しました。左下腹部を押さえると右下腹部が痛みます。これは腸のガスが圧迫されるからです。感度は30.1%で、特異度は84.4%になります。
 
 
2011年「虫垂炎」
Appendicitis
BMJ 2011; 343 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.d5976 (Published 06 October 2011)
 
 
 
ドイツのユダヤ人外科医、ヤコブ・ブルンベルクは、1907年に反跳痛と呼ばれる
ブルンベルク徴候を発見しました。
 
 
J. M. Blumberg:
Ein neues diagnostisches Symptom bei Appendicitis.
Münchener medizinische Wochenschrift, 1907, 54: 1177-1178.
 
 
1903年にアメリカの外科医ジョン・ベンジャミン・マーフィーは、胆嚢炎の圧痛点であるマーフィー徴候を発表しました。マーフィー徴候の感度は48%、特異度は79%になります。
 
 
2005年「ジョン・ベンジャミン・マーフィー」
John Benjamin Murphy (1857 – 1916)
Kenneth Musana, MD and Steven H. Yale, MD
Clin Med Res. 2005 May; 3(2): 110–112.
 
 
 
マーフィー徴候は第9肋軟骨の直下であり、昔の日本の期門(LR14)穴の位置です。マーフィーは季肋部に指を突っ込むように触診することがコツと書いていました。
 
 
1852年にドイツの医師イシュマール・イシドール・ボアズが胃潰瘍のボアス点を発見します。
 
1889年にアメリカの外科医チャールズ・マックバーネーがマックバーネー点を発見します。
 
1894年にジェームズ・マッケンジーがマッケンジー帯を、ヘンリー・ヘッドがヘッド帯を発見しました。
 
1903年にアメリカの外科医ジョン・ベンジャミン・マーフィーは、胆嚢炎の圧痛点であるマーフィー徴候を発表しました。
 
1907年にドイツのユダヤ人外科医ヤコブ・ブルンベルクがブルンベルク徴候を発見しました。
 
1907年にデンマークの外科医ニールス・ロブジングがロブジング徴候を発見しました。
 
1800年代後半から1910年にかけての圧痛点研究はいまだに医学の教科書に掲載され、リバイバルしています。
 
 
2018年「腹部フィジカル・サインと医学的命名者:触診による理学検査パート1:1876-1907」
Abdominal Physical Signs and Medical Eponyms: Physical Examination of Palpation Part 1, 1876–1907
Vaibhav Rastogi,et al.
Clin Med Res. 2018 Dec; 16(3-4): 83–91.
 
 
 

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