ミクログリア細胞とアストロサイト

2021年1月
「鍼鎮痛における神経膠質細胞クロストークと神経可塑性を介した中枢性感作の役割」
The Role of Neuroglial Crosstalk and Synaptic Plasticity-Mediated Central Sensitization in Acupuncture AnalgesiaZhongxi Lyu,
Neural Plast. 2021; 2021: 8881557.
Published online 2021 Jan 18. doi: 10.1155/2021/8881557https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7834789/
 
 
 
現在、大きな話題になっているのが神経障害性疼痛であり、 従来は「神経細胞=ニューロン」ばかり研究されていましたが、その周囲のグリア細胞(=神経膠細胞)は注目されませんでした。ところが、P2X4R受容体を研究するうちに神経障害性疼痛、慢性疼痛ではグリア細胞こそが主役であり、特にマクロファージ起源のミクログリア細胞が産生する因子が主役となることが判明しました。これはニューロンからだけ見ていたらわからなかった事実であり、疼痛理解のパラダイム・シフトになります。
 
神経損傷が起こると脊髄内のミクログリア細胞が活性化し、ミクログリア細胞内のP2X4R受容体が活性化するとミクログリア細胞はBDNF(脳由来神経成長因子)を放出し、脊髄第1層ニューロンを異常興奮させ、神経障害性疼痛となります。鍼はミクログリア細胞と正常細胞アストロサイトに働きかけるようです。
 
 
以下、引用。
 
【4.3.2。鍼治療によるグリア活動の抑制】
神経因性疼痛モデルでは、脊髄ミクログリアと星状細胞アストロサイトの阻害がそれぞれ即時および長期のEA鎮痛を媒介することが示されている[ 64 ]。また、EAの鎮痛効力はミクログリアおよびアストロサイトの活性化の調節に関連するかもしれないことが報告されている。鍼はP38МARKを含む分子シグナル・トランスダクション・パスウェイを抑制する。
 
 
 
p38分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(МARK)は熱や浸透圧ストレスで活性化されるプロテインキナーゼであり、全身の細胞に分布し、細胞分化、アポトーシス、オートファジーに関与しています。
 
 
2019年
「電気鍼はアルツハイマー病モデル動物の神経炎症による認知機能障害を緩和する」
Electroacupuncture attenuates cognition impairment via anti-neuroinflammation in an Alzheimer’s disease animal model.
Cai M et al.
J Neuroinflammation. 2019 Dec 13;16(1):264. doi: 10.1186/s12974-019-1665-3.
 
 
 
韓国・韓医学研究院の研究で、難解ですが画期的な研究だと感じました。アルツハイマー病はアミロイドβ沈着した部分のミクログリアやアストロサイトの炎症によって悪化します。
 
 
以下、引用。
 
まとめると、われわれのデータによれば、電気鍼治療はミクログリアを介してのアミロイドβ斑を減少させる。
 
【結論】
我々の発見は、電気鍼治療がアルツハイマー病モデルの神経炎症とシナプス退行性変性による認知機能障害を改善することを示した。
 
 
 
2018年頃から、電気鍼が海馬のシナプス形成を促進して認知障害を改善するという研究が発表されています。
 
 
2018年広州中医薬大学
『電気鍼は成人ラットでの認知障害を改善し、海馬のシナプス形成を促進する』
Electroacupuncture Ameliorates Cognitive Deficit and Improves Hippocampal Synaptic Plasticity in Adult Rat with Neonatal Maternal SeparationLili GuoEvidence-Based Complementary and Alternative MedicineVolume 2018, Article ID 2468105, 9 pages
 
 
 
疼痛の中枢化におけるミクログリア細胞や星状細胞アストロサイトの働きと鍼の関係を追いかけているうちに、認知症や神経再生などへの鍼の働きへと研究が広がっていきます。個人的考えでは、鍼は(痛みを含めた)記憶を書き換えると考えています。
 
 
 
 
 
 

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