MENU

認識論的陥穽

 

 
2021年5月17日『ブルームバーグ』
『新型コロナ空気感染の可能性、WHOも認める-科学者の主張受け入れ』
 
 
 
これこそ科学史、科学哲学を学んできた方にとっては、今、目の前で起こった大変化です。特に『WIRED』に5月に掲載された以下の記事は必読です。
 
 
2021年5月『WIRED』
『60年間もオールド・サイエンスがCOVID退治を台無しにしてきた!』
The 60-Year-Old Scientific Screwup That Helped Covid Kill
『パンデミックの期間中ずっと科学者たちはいかにウイルスが拡散するのかについて口論してきた。「飛沫感染だ!エアロゾル感染じゃ無い!」この戦いのキモは大きな尊大さによる小さなエラーだった」
All pandemic long, scientists brawled over how the virus spreads. Droplets! No, aerosols! At the heart of the fight was a teensy error with huge consequences
 
 
 
物理学者、エアロゾル科学者、流体力学者たちは、パンデミックの最初からこれを指摘してきました。私もFacebookで何度もMITなどの物理学者たちの作ったコンピューター・グラフィックス映像や実験映像を紹介してきました。しかし、医学者の方々は頑なで対話にならないのです。これは私もずっと不思議に思っていました。
 
以下、引用。
 
深く尊敬されている気体物理学者のリディア・モラウスカは、ミーティングを開催して、いかに異なるサイズの感染性パーティクルがいかに飛散するのかを説明しようとした。WHOの医学専門家は、リディアの話を突然、まるでリディアが間違っているかのように打ち切った。物理学者のマーが思い出したところでは、医学者の傲慢さは彼女にショックを与えた。まるで(尊敬される物理学者の)リディアと物理学について語る価値はないと医学者が言っているような振る舞いだった。
 
 
 
モラウスカ先生は大気汚染について20年以上もアドバイスしてきた気体学者です。あまりに医師たちの態度が頑なで不可思議なので、物理学者たちは不思議に思い「対話にならない原因」を探し始めます。ヴァージニア工科大学のリディア・マーさんはCDCやWHOの一流と思われている医学者たちが「5ミクロン以下の大きさでないと空気感染しない」という物理学者からは信じ難い非合理的・非科学的信念を持っていることに気づきます。
 
 
時代遅れの科学が公衆衛生学を基礎として支えていた。リディアはまず、「なぜ医師と科学者のコミュニケーションがそこまで破綻しているのか」というミステリーを解き始めた。
 
それは文字通り小さな問題だが、物理学の観点からは完全な大間違いなのだ。物理学について学んできた彼女の視点から見ると空気中での動きは全く異なる。5ミクロンよりも大きなパーティクルがエアロゾルのように振る舞い、温度や湿度、空気の流れのスピードで変化する。
 
この認識エラーが意味するのは、医学者たちの歪んだ認知がいかに一般の人々を病気にしているかということだ。
 
 
 
 
リディア・マー先生は実験に基づいて論文を書きますが、全ての医学雑誌に拒否され、物理学の雑誌にしか論文は掲載されませんでした。そして、リディア・マー先生は大学院生のケイティ・ランドールと医学史から論文を掘り起こしはじめます。
 
1950年代の医学論文に「空気感染」の言葉を見つけますが、5ミクロンの根拠が見つかりません。1930年から1940年代の論文ではウエルズという学者が100ミクロンで空気感染が起こるとしていました。ウエルズは結核の空気感染を実験で証明した一流の科学者でしたが、死後にCDCの誰かがウエルズの100ミクロンを5ミクロンに改竄しました。
 
 
ニュースがヘッドラインを飾ると強い反発が生まれた。有名な一流の公衆衛生学者がWHOを守るために突進する。ツイッターでは論争が終わらない。
 
 
実際には、科学論文を読んでも、空気感染であることを認めても、一般大衆の行動は全く変わりません。ただ、科学哲学における認識論や科学史に興味を持つ方にとっては興味深く、学ぶものが多い出来事だと思いました。
 
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次