肩こりと抑うつの身体化

2016年
「深刻なクビと肩の不快感(肩こり)は都市労働者の潜在的リスクファクター」
Potential Risk Factors for Onset of Severe Neck and Shoulder Discomfort (Katakori) in Urban Japanese Workers
Takayuki Sawada et al. Ind Health. 2016.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4939863/


以下、引用。

仕事のことで落ち込んだ心理状態でいることは、そうでないよりも3.1倍も深刻な肩こりのリスクを示した。


近年、肩こりについての心身医学的な研究が多く発表されています。

2014年「腰痛と肩こりの実態,危険因子と新たな視点に立った解釈案」
Risk factors for low back pain and katakori: a new concept
松平浩 et al.
『日本臨床』 72(2), 244-250, 2014-02
※精神社会的ストレスは脳の機能障害のひきがねとなり、うつと身体化(肩こり)を引き起こす。

肩こりは仕事のストレスや短い睡眠、抑うつ気分と関連しています。抑うつと身体化の側面があります。

以下、2016年論文から引用。

女性であること、短い睡眠時間と、仕事による抑うつ気分は明らかに深刻な肩こりと関係していた。

肩こりは精神的ストレスや睡眠不足、抑うつ気分の身体化という側面は確実にあります。

肩こりには、局所の阿是穴を細かく見つけて、その患者さんに合わせた最適な刺激で響かせた方が効果があります。指圧の場合は、穴下の反応が緩むような持続圧迫です。この指圧の持続圧迫の響きや鍼の適切な響きが局所の血流だけでなく、脳の状態を変えるようです。

心身症には、鍼灸やマッサージ指圧のようなフィジカルな介入で身体的リラクゼーションを実感していただくだけでストレスは軽減されます。さらに患者さんが望むなら身体化という問題についてコンサルティングできます。

身体化は臨床ではしょっちゅう出会う現象ですが、あまり医学教育の中で説明されません。身体化はフロイトの盟友であったヴィムヘルム・シュテーケルが1924年に提出した概念です。ヴィムヘルム・シュテーケルは性嗜好異常という概念を精神医学で提唱し、この概念はWHOのICDやDSMにも残っています。

また、ヴィムヘルム・シュテーケルは神経症や精神分析の理論に多大な貢献を行い、シュテーケルの「憎しみとは愛の前駆者である」という指摘はフロイトが何度も引用して有名となりました。

もちろんヴィムヘルム・シュテーケルの言う身体化とは当時のヒステリーに関連した言葉ですが、日本における肩こりはヒステリーや身体症状症とはまったく関係ない、物理的な実在です。

 

肩こりは精神的ストレスや睡眠不足、抑うつ気分の身体化の側面はあるのですが、なぜ、ストレスが日本では「肩こり」として身体化されるかは謎です。また、肩こりをとると頭痛、めまいのほかに精神神経症状が取れるメカニズムも謎です。

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