厚生労働省はオリンピック終了まではラムダ変異株の検出は公表しない計画だった

2021年8月13日『東京新聞』
『ラムダ株感染の女性は五輪関係者 7月に国内初確認』
 
 
東京オリンピック開会式3日前の2021年7月20日、羽田空港でペルーからの五輪関係者が新型コロナウイルス・ラムダ変異株に感染していたことが判明しました。
 
2021年7月28日に東京大学の研究者たちは羽田空港で発見されたラムダ変異株が高い感染性とワクチンを無効化する免疫耐性を持っていることを警告しました。
 
 
2021年7月28日『BioRixiv』
「新型コロナウイルス・ラムダ変異株は、高い感染性と免疫耐性を示した」
SARS-CoV-2 Lambda variant exhibits higher infectivity and immune resistance
Kei Sato et al.
 
 
以下、引用。
 
ウイルス感染性の増加に加えて、デルタ変異体はワクチン誘発性中和に対してより高い耐性を示す。
 
同様に、ここではラムダ変異体が感染力の増加だけでなく抗ウイルス免疫に対する耐性も備えていることを示した。
 
 
世界中がデルタ変異株の「(空気感染の)水痘並み」という高い感染性と、ワクチン耐性からのワクチン・ブレークスルー感染で大騒ぎしているところで、信頼されている日本のサイエンティストからの「ラムダ変異株はデルタ変異株以上に危険な可能性がある」という警告は世界中に報道されました。日本以外で。
 
そして2021年8月6日にアメリカのメディア『デイリービースト』で、日本の国立感染症研究所の匿名の内部告発者からの「厚生労働省は、オリンピック終了まではラムダ変異株の検出は公表しない計画である。厚生労働省の幹部は、羽田空港からは見つかったが日本国内には到達していないとコメントしている』という情報が報道されました。
 
 
2021年8月6日『デイリービースト』
「東京は致死性の新しいCOVIDラムダ変異株が日本に到達したことをオリンピック前に隠蔽した」
 
 
すると、NHKをはじめとする国内メディアが一斉に「7月20日にラムダ変異株が羽田空港で見つかった」と報道し始めました。そして8月13日になって、羽田空港でのラムダ変異株感染は五輪関係者であることが判明しました。
 
総合的に情報を分析すると、『デイリービースト』の記事は限りなく真実に近い情報であったことが証明されたわけです。しかし、厚生労働省と国立感染症研究所の幹部が行った判断は、政治的にも倫理的にも、結果的に「大失策」なのは間違いないです。「オリンピックの成功と国民の生命健康を守る情報提供を天秤にかけて、オリンピックの成功の方をとった」と疑われて、それを世界中に報道されたわけです。その疑いを持たれることこそがリスク・コミュニケーションの失敗です。
 
 
リスク・マネジメントの分野に予防原則があります。「深刻で回復不可能な損害を及ぼす可能性があるとき、因果関係が科学的に完全に立証されていなくても、効率より安全を優先して行動するという原則」です。
 
鳥インフルエンザなど感染症の防疫では予防原則に基づいて、家畜の大量の殺処分など、一般から見れば「やり過ぎ」くらいの行動を行います。
 
デルタ変異株やラムダ変異株の情報分析については予防原則を採用した方が合理的だと思います。デルタ変異株は初期よりも1.260倍のウイルス量を持ち、アルファ変異株より64%も感染力が高いのです。
 
 
2021年7月23日『メドページ・トゥデイ』
「デルタ変異株は1.000倍の感染力を持っていることについて」
What’s This About Delta Being 1,000 Times More Infectious?
 
※Ultimately, they found that the viral load for the first positive test was 1,260 times higher for Delta compared with the variant in the initial wave of infections .
 
※ The increased transmissibility for Delta is also supported by epidemiological evidence from the U.K., which found Delta to be about 64% more transmissible than the Alpha variant (B.1.1.7).
 
 
 
2021年8月11日、シンガポール国立大学による画期的研究が報道されました。
 
 
2021年8月11日『サイエンスデイリー』
「話すことと歌うことによるエアロゾルはCOVID19感染に決定的な役割を果たすかもしれない:シンガポール研究」
Fine aerosols emitted during talking and singing may play a crucial role in COVID-19 transmission: Singapore study
 
 
この研究の発見は、室内でのCOVID19感染がなぜ起こりやすいのかを示している。呼吸エアロゾルを非薬理的インターベンション、ユニバーサル・マスクや室内の換気、距離、空気清浄の(HEPAフィルターのような)テクノロジーによる換気を実行してエアロゾル曝露を減らすことを示している。
 
Viral Load of SARS-CoV-2 in Respiratory Aerosols Emitted by COVID-19 Patients while Breathing, Talking, and Singing
この論文は面白かったです!
 
 
 
2021年8月13日、アメリカ産業衛生学会が空気感染に基づく職場衛生ガイドラインを改定しました。
 
 
2021年8月13日
「アメリカ産業衛生学会がCOVID19ガイドラインを改定した」
AIHA Releases Revised COVID-19 Guidelines
 
 
以前、アメリカ産業衛生学会と呼ばれていたAIHAは、 CDCの新しいリコメンデーションに合わせた新しい職場復帰ガイドラインを改定した。これはCOVID19が空気感染するという科学的根拠エビデンスを参考にしたものである。
 
 
やはり空気感染を日本政府が頑なに認めないということに戻ってしまいました。本当になぜ認めないのでしょうか。
 
 

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