彼岸花と湧泉と認知症治療薬、ガランタミン

近所で彼岸花が咲いていました。

彼岸花は石蒜(せきさん)という生薬で、『本草綱目』や『和漢三才図会』などにも掲載されています。

ムクミに対して彼岸花の根をつぶしてペースト状にして湧泉穴に貼るという民間療法は、現代では記述が多いのですが、『本草綱目』などには掲載されていませんでした。出典が気になります。

治水腫,鮮石蒜8個,蓖麻子(去皮)80粒。共搗爛罨湧泉穴1晝夜,如未愈再罨1次。
(《浙江民間常用草藥》

石蒜(彼岸花)の根は有毒で、アルカロイドのリコリンが含まれています。

また、最近のトピックスとして、彼岸花の根には2011年にアルツハイマー病治療薬として発売されたガランタミン成分が含まれています。

ガランタミンの発見は民族植物学の歴史です。

ソ連薬局方を創った偉大な薬理学者、マシュコフスキーが、1951年にブルガリアの民間療法で頭痛の際にヒガンバナ科のスノードロップ(=ガランサス)を額に塗っていることを報告しました。

マシュコフスキーはウラル山脈の民間療法でポリオの子どもにスノードロップが使われていることに注目してガランタミンを分離し、アセチルコリンエステラーゼ阻害作用を証明しました。

1980年代に認知症研究者によってガランタミンのアセチルコリンエステラーゼ阻害作用が注目され、アメリカFDA、イギリスNICEによってアルツハイマー病治療薬として認可を受けました。2011年から日本でもヤンセンファーマからレミニールとして販売されています。

コリンエステラーゼの活性を阻害することで脳内のアセチルコリンの濃度を高くします。

2019年「天然物ベースの薬剤:アルツハイマー病およびその他の神経障害に対する治療の可能性」
Editorial: Natural Products-Based Drugs: Potential Therapeutics Against Alzheimer’s Disease and Other Neurological Disorders
Muhammad Ayaz,et al.
Front Pharmacol. 2019; 10: 1417.
Published online 2019 Nov 26.

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