脳機能と扁桃核

2019年
「耳介鍼マイクロシステムの科学:精神医学、神経筋骨格そして機能障害における扁桃核の役割」
The Science of Auricular Microsystem Acupuncture: Amygdala Function in Psychiatric, Neuromusculoskeletal, and Functional Disorders
Donald Liebell, DC, BCAO
Med Acupunct. 2019 Jun 1; 31(3): 157–163.
Published online 2019 Jun 17. doi: 10.1089/acu.2019.1339
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6604906/


写真はポール・ノジェ耳介医学のフェーズ1・フェーズ2・フェーズ3の扁桃核の位置です。

2019年に読んだ『メディカル・アキュパンクチャー』の中でも面白い論文だと思いました。

脳における扁桃核は大脳辺縁系であり、海馬と扁桃核は記憶と情動、特に恐怖・不安・怒りに関連しています。

現在、アメリカでは軍人のPTSDに鍼が使われていますが、まさにPTSDは恐怖と記憶の病気です。また、慢性疼痛は恐怖や不安、破局的思考と記憶・学習が関連しています。

そして、脳研究では鍼の効果は扁桃核と明らかに関連しているのです。

論文著者のドナルド・リーベルマン先生は、以下の疾患に耳介の扁桃核を使われています。

薬物中毒・依存症
疼痛管理
片頭痛

片頭痛と扁桃核に関連があるという研究が2017年に発表されています。

腰痛

慢性腰痛は扁桃核および前帯状皮質と関連があります。

精神科アプリケーション

医学研究は、多くの精神疾患が扁桃核の機能不全と関連があるとしている。

扁桃核は多くの神経感情的なコンディションと関連しており、不安症、うつ病、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、恐怖症である。

2008年のブライアントの報告では、PTSDの約半分の患者は認知行動療法に反応しない。

かつてPTSDの心理療法の研究を調べた際に驚いたのは、PTSDに認知行動療法を行うと、全く効果が無いばかりか、劇的に悪化する例が多かったことです。フラッシュバックといってトラウマのある過去の光景を思い出し、それが止まらなくなります。

アメリカ軍の調査でも、PTSDの患者に心理療法をしたところ悪化例が多かったために、鍼灸を採用したのです。普通に考えて、現代のメンタル疾患でトラウマが絡んでいないものを挙げる方が難しいと思います。

この論文では、リーベルマン先生が経験された精神疾患の耳鍼治療が書かれているのですが、以下の記述が面白かったです。

以下、引用。

しかしながら、確固とした扁桃核ポイントが存在しないため、電気探索デバイスが必要となる。

ストレス、または機能障害があるなら、それぞれのフェーズの患者の耳の扁桃核ポイントを見つける。

この代替手段はPTSDや感情障害のような病の治療として不可欠であることが証明されている。

ノジェの3フェーズの中から反応のあるポイントを使うのがコツです。

中国式耳鍼にノドを意味する扁桃は耳垂にありますが、脳の扁桃核は存在しません。

他にも耳穴の扁桃核の主治として、以下の疾患を挙げています。

胃腸疾患
ストレス潰瘍
過敏性腸症候群
胃食道逆流症
嗅覚機能
勃起障害
腎機能

耳鍼の扁桃核の適応症として興味深いです。

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